進化する糖尿病治療法

肥満は本当に悪いのか? 健康に対して弊害になるのか?

東京慈恵会医科大学の坂本昌也准教授(C)日刊ゲンダイ

「肥満は悪い」と言われるのは、なぜでしょうか? 何が私たちの健康に対して弊害になるのでしょうか?

 ひとつは、生きていく上で重要なさまざまなホルモンの分泌が、正しく行われなくなることが挙げられます。というのも肥満によって脂肪を蓄積する「白色脂肪細胞」が膨れ上がって体積が増え数も増えていきます。この白色脂肪細胞は、ホルモンの分泌を担っているので、体積と数の増加によって、あるホルモンは分泌量が増え、あるホルモンは分泌量が減ってしまうのです。

 すると、さまざまな病気のリスクが上がる。例えば、肥満で血液中のブドウ糖の濃度が上がって糖尿病リスクが高くなるのは、血液中のブドウ糖の取り込みを抑制するホルモンの分泌が増加するから。また、肥満は高血圧にも関係しているのですが、これは、血管収縮につながるホルモンの分泌量が増えるからです。

 高血糖や高血圧は血管を傷つけます。ところが、肥満は傷ついた血管を修復するホルモンの分泌を抑制する方向に働くため、動脈硬化が進行し、血栓ができやすくなります。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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