猛暑に気を付けたい病気

【便秘】脂質と食物繊維の不足が拍車をかけて大病を招く

クセになる前に予防しないと大病を招く
クセになる前に予防しないと大病を招く

 いまは熱中症ばかりが注目されるが、腸の活動が低下して起こる機能性便秘にも注意が必要だ。例えば腸管には、最大規模の免疫器官が存在し、免疫の働きを担う細胞や、IgAと呼ばれる侵入者と直接戦うタンパク質である抗体が配置されている。その数や量は体全体の60%以上で、体内に侵入した細菌などを撃退する。便秘になると、こうした免疫細胞が失われ不調が表れる。問題は、便秘が慢性化すると腸閉塞や痔だけでなく、排便時にいきむことで脳卒中や心筋梗塞などを発症するなどして、短命になりやすいことだ。早稲田大学持続型食・農・バイオ研究所重点領域研究機構招聘研究員の古谷彰子氏が言う。

「米国のメイヨー医科大の研究では、便秘のある人は、そうでない人に比べて15年後の生存率が20%以上低かったと報告されています」

 なぜ、夏は便秘になりやすいのか? 多くの人は熱中症を恐れて極力外出せず、冷房の効いた部屋で長時間過ごす。体を動かさないので食欲も湧かず食事量も少ない。夏のこうした生活習慣が便秘の原因になるという。

「便の70~80%は水分。夏はただでさえ体内の水分が不足して便秘になりやすいのに、体を冷やして運動も食事も不足すれば腸の蠕動運動が弱まり、便が一層出にくくなります。これに、夏に人気のそうめんなどの脂質抜きのあっさり料理が拍車をかけます。脂質抜きダイエットが流行したとき、便秘になる人が続出したのと同じです」

 脂質はその量と質が悪化すると細胞の中から外へ老廃物を出したり、細胞の外から中へ栄養素を入れたりするのに悪影響が出る。他にも体内で多くの材料に使われるため体内の代謝に異常をきたす原因となり、便秘リスクを上げるという。

「油脂には2種類あり、飽和脂肪酸は常温で固体のものが多く、肉の脂身やバターなどの乳製品などに含まれます。不飽和脂肪酸は常温で液状のものでオリーブ油や植物油、魚油に多く含まれ、血液中の中性脂肪やコレステロールの調整などに関わっています。近年、厚労省でも着目されているのが不飽和脂肪酸であるn―3系脂肪酸です。それを豊富に含む魚油は肝臓の体内時計を変化させて起床リズムを整えるほか、肥満に関わる炎症反応を予防するなどが私たちの研究でわかっています」

「野菜サラダは取っている」という人でも食物繊維不足の便秘が目立つ。

「食物繊維の必要摂取量は成人男性20グラム、女性18グラムですが、レタスは100グラム当たり1.1グラム、トマトは1グラムしか含まれない。レタスのみで必要量をカバーしようとすると4~5玉食べなければなりません。しかも、食物繊維には2種類あって、水溶性と不溶性を2対1の割合で取ることが大切。便秘の改善に役立つのは不溶性ですが、レタスやトマトでは十分に補えないため、プラスアルファで水溶性、不溶性両方を多く含むゴボウや、ナメコなどを取ることも大切です」

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