緑内障患者の95%以上が間違い「目薬」正しいのさし方とは

緑内障は失明原因の第1位
緑内障は失明原因の第1位(C)日刊ゲンダイ

 緑内障は眼圧によって視神経がダメージを受け、視野が欠けて失明に至る病気だ。日本人の失明原因の第1位でもある。治療で注意すべきことは何か? 「二本松眼科病院」(東京・平井)の平松類医師(医学博士・眼科専門医)に聞いた。

 平松医師は緑内障の治療を行う医師の立場であるが、その一方で、父親が緑内障であり、患者の家族の立場でもある。

「眼科医にとっては『知っていて当たり前』のことが、患者の家族の立場になって初めてそうではないと気づきました。特に間違いが多いのが、目薬のさし方です。95%以上の人が間違えていると言ってもいいのではないでしょうか」

 代表的なものを挙げてもらうと「さした後、目をパチパチする」「ティッシュで拭く」「2滴、3滴とさす」「目薬が目全体に行き渡るように目玉を動かす」「数種類の目薬を一気にさす」など……。

「目薬は1滴さした後、目を閉じて軽く目頭を指で押さえ、じっとする。複数の目薬をさす時は1~5分ほど間をおくというのが正しい方法です」

 目をパチパチすると涙が分泌されたり目薬が鼻腔に流れたりして効果が薄れる。さしてすぐティッシュで拭けば、肝心の目薬がティッシュに吸い取られてしまう。2滴以上さすと目からあふれ、目の周りのかぶれや黒ずみなどの原因になり、数種類を一気にさすと、それぞれの薬の効果が薄まってしまう。

 さし忘れが多い人は、「食前・食後にさす」などと日常の行動に絡めるといい。中には、「1日2回さすのは面倒」という人もいるだろう。

「今は複数種類の薬を1つにまとめた合剤も出ているので、それに替えることもできます。回数に限らず、『しみる』『充血する』『目薬の副作用である目の周りの黒ずみが嫌』など目薬で不便を感じていることがあれば医師に言うべき。緑内障の目薬は非常に種類が多いので、患者さんがより使いやすいものへの変更も検討できます」

 緑内障の治療は、目薬かレーザー治療や手術しかない。いずれも完治させるものではなく、手術の効き目は7割程度。レーザー治療では人によってまちまちで、目薬より効果が高いわけではない。さらに手術は患者への負担が大きくかえって術後に視力が下がるケースもある。つまり、緑内障を発症すれば、毎日きちんと決められた用法で目薬をさすことが、症状の進行を止める確実な治療法なのだ。

「緑内障は末期になるまでは自覚症状がありません。だから治療途中でドロップアウトしてしまう患者さんもいます。しかし、そうすると必ず進行します。何年も放置して、見えづらくなったからと再来院する患者さんでは、すでに末期で、失明に至るのをなんとか食い止めるしか術がない、場合によってはそれすら難しい、というケースもあるのです」

■目薬をさしたくない人には最新治療MIGSという手も

 治療のモチベーションを上げる方法としては、ひとつは、緑内障についての知識を高めること。平松医師が行った調査では、緑内障の説明をしっかり受けて治療をしたグループと、そうでないグループでは、前者の方が治療成績が良かった。

 もうひとつは、患者会などに参加することだ。会報などで緑内障情報を常に耳にすることで、治療の継続につながりやすい。

 目薬をさす量を減らしたいと思ったら、何か打つ手はあるのだろうか?

「最新治療としてMIGS(ミグス=低侵襲緑内障手術)があります。従来の緑内障手術はリスクが大きく、『失明を避けるためにはこれしかない』といった消極的な理由で行うものでしたが、MIGSはリスクが小さい。白内障手術に追加して行える点もポイントです」

 白内障手術に5分ほど追加するだけで終わる。出血リスクはあるが、眼圧を下げる効果があり、目薬の量を減らせる可能性はある。ただし、全員がそうではなく、症状が進行している人では、引き続き目薬を同じだけさし続けなければならない。健康保険適用だ。

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