認知症の両親を看取った経験があり、多少認知症に関する知識を持つ私の別の知人の「認知症なんて恐るるに足らず、です」という言葉が彼を勇気づけた。新しい情報の入力能力が多少低下すること、物忘れが増えることなどはあるにせよ、脳にラクをさせないことで進行は防げるというサジェスチョンを受け入れ、診断から3カ月を過ぎた現在では、自らの経験を生かして認知症関連の書籍の企画を進めているとか。
また、職業柄、若いころからのルーティンである新聞、雑誌の記事のスクラップ、浮かんだプランのメモはもちろん、好きなジャズライブの観賞、うまいもの店巡り、週末の競馬などを以前にも増して精力的に続けている。つまりポジティブなスタンスで脳に負荷をかけているのだ。さらに、補聴器を新調し、スムーズなコミュニケーションに努めている。家族も現実を受け入れた上で「できるだけ特別扱いしない」と決めているという。知人の話を聞くかぎり、認知症の高齢者と家族の関係は理想的といっていいだろう。
後悔しない認知症