がんと向き合い生きていく

「決まりなのでできません」抗がん剤を拒否され言葉を失った

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■腎機能は回復したが……

 そして5日後、Aがん病院の外来を再度受診しました。採血後、以前に診てもらった消化器外科のB医師から「抗がん剤をやれるかどうか、消化器内科に回ってください」と言われ、その日のうちに消化器内科のN医師の診察を受けました。

 Gさんは病気の急激な悪化もあってとても落ち込んでいました。それでも、病院では迅速にしっかり対応してもらえていると納得していました。

 しかし、消化器内科のN医師の言葉に愕然とします。

「今日のクレアチニンは1.5ですか……。Gさんに効くと思われる抗がん剤は1.3以下でないとできないのです。0.2高いだけですから、私は大丈夫だと思うのですが、病院の決まりなのでできません。病院のルールに反して治療すると、私はこの病院に居られなくなってしまいます。ですから治療は無理なのです」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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