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電子たばこの安全性に疑問 継続的吸引で炎症や肺にダメージ

電子たばこを使用する中高生が後をたたない(写真はイメージ)
電子たばこを使用する中高生が後をたたない(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 電子たばこに使われる「ベープ・ジュース」と呼ばれる液体の一部がアセタールという刺激性化学物質をつくり出し、継続的に吸引すると炎症を起こしたり、肺にダメージを与えるかもしれない――。そんな研究結果が大きな波紋を呼んでいます。

 電子たばこは特に若い世代に爆発的な人気で、米国疾病対策センターによれば、300万人もの中高生が電子たばこを使用しているとされています。電子たばこの規制は州によって異なりますが、どの州も18歳未満は禁止。それでも吸引が後を絶たないのは、市場の7割を占めるトップブランド「ジュール」のUSBドライブに酷似したデザインと、マンゴー、クリームブリュレといったバラエティーに富んだフレーバーが若者を引きつけているからです。

 今回、研究を行ったイエール大学とデューク大学の合同チームが対象としたのも、このジュールのべープ・ジュースです。電子たばこには成分表示が義務付けられていないため、分離実験で調べたところ、クリームブリュレから刺激性物質のアセタールが検出されたといいます。

 アセタールは食品の味や香りづけに使われるアルデヒドという物質がアルコールに反応することで発生しますが、食品ではなく吸引でどんな影響を与えるのかは知られていません。研究チームは「電子たばこの人体への影響はまだほとんど分かっていない。さらなる研究が必要だ」としています。

 アメリカでは先月、ウィスコンシン州で、8人の10代の若者が息切れ、胸の痛み、咳(せき)などで入院し、「彼らは闇マーケットで流通しているベープ・ジュースを使って電子たばこを吸っていた」とニュースになりました。

 一方、カリフォルニア州サンフランシスコでは、10代の吸引を防ぐために電子たばこの販売禁止に踏み切る予定です。

 普通のたばこに比べて安全とされてきた電子たばこですが、その安全性に関する論争は、今後ますます大きくなりそうです。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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