記憶に新しい元TOKIOメンバーによる強制わいせつ事件。依存症なのか否か? いずれにしてもアルコールの怖さやリスクに注目が集まった。
「お酒は多くの場合、私たちの生活に豊かさと潤いを与えます。一方、不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となります。そしてさらに、アルコール健康障害は、本人の健康問題であるのみならず、周囲の人を不幸にすることがあります」
そのために知っておかなくてはならないアルコールに関する知識とは。
「産業医としての経験からすると、以下に1つでも当てはまる人は、アルコール依存症になるリスクがあると思います」
①2週間すら断酒できない②1日の平均飲酒量が純アルコール換算で60グラム以上③飲みだすとコントロールがつかなくなる④職場や家庭で困ったことがある、または、困ったと周囲に言われたことがあるなど。
では、節度のある適度な飲酒量とはどれくらいか。1日平均純アルコール換算で約20グラムといわれている。これはビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ウイスキーならダブルで1杯、ワインなら4分の1本、缶酎ハイでロング缶1本に当たる。
生活習慣病のリスクが高まる飲酒量は、適量の倍である40グラム以上だ。
男性(入院者、熊本県を除く)の週の飲酒の状況は、「毎日」が26.6%にも上る。つまり、4人に1人が毎日飲酒していることになる。
一方、女性は「飲まない(飲めない)」が47.4%と最も多い。
夫は毎日飲酒をして体を壊す、それを横目に妻は飲まずに元気いっぱいという図式が目に浮かぶ。50代の男性Aさんは毎日、ビールを飲んだ後にワインを1本空けてしまう酒豪。それを20代のころから続けてきたのだという。
奥さんをはじめ、周囲はほとんどさじを投げていた。ところが、ある日、みぞおちに杭を打たれたような激痛に襲われた。
「あの時はホント死ぬかと思いました」とAさん。急性膵炎だった。
「二度とあの痛みは経験したくありません。それに『今度、入院したら知らないから』と妻から言い渡されたこともあり、お酒をやめることにしたんです」
少しでも飲むと深酒になることを自覚していたAさんは、きっぱりと断酒。すでに3年が経つのだという。
「アルコール依存症の唯一の治療法は断酒であり、節酒ではありません。状況により治療方法はさまざまで、離脱・断酒、酒害教育、抗酒剤などの薬物療法、心理社会的治療(カウンセリング)などがありますが、一番大切なのは、Aさんのように本人の意思といえるでしょう。ある意味、麻薬などの中毒症のそれと非常に似ています」
手遅れになる前に、酒との付き合い方を見直したいものである。 =構成・中森勇人
(おわり)
ストレス社会の生き延び方