認知症を発症する要因はさまざまで、大きく「遺伝的要因」と「環境的要因」に分けられます。遺伝的要因に基づく認知症リスクを完全に排除することは困難ですが、環境的要因は生活習慣を見直すなどして変化させることができます。
「生活習慣の違いが、遺伝によるリスクにかかわらず、認知症の発症とどのように関連しているのか」を検討した研究論文が、米国医師会誌電子版の2019年7月14日付に掲載されました。
この研究では、英国の大規模データベースに登録されている、認知症や認知機能に障害がない60歳以上の高齢者19万6383人(平均64.1歳)が対象となりました。
被験者は認知症の遺伝リスク、および生活習慣(喫煙状況、定期的な運動、食事内容、飲酒状況)が調査され、遺伝リスクについては低度、中等度、高度の3グループに、生活習慣についても「好ましい」「中間」「好ましくない」の3グループに分類されました。
中央値で8年にわたる追跡調査の結果、遺伝リスクが「高度」の人では、遺伝リスクが「低度」の人に比べて1.91倍、統計学的にも有意に認知症の発症リスクが増加しました。
他方で、遺伝リスクが「高度」の人のうち、生活習慣が「好ましい」人では、「好ましくない人」に比べて32%、統計学的にも有意に認知症の発症リスクが低下しました。
つまり、遺伝的リスクが高いと認知症の発症リスクも増加しますが、この増加は生活習慣の改善で、ある程度低下する可能性が示されているのです。
好ましい生活習慣の人では、潜在的に健康状態が良好な可能性もありますが、禁煙する、定期的に運動する、健康的な食事に配慮する、飲酒を控えるなど、生活習慣を見直すことで認知症の予防効果が期待できるかもしれません。
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