がんと向き合い生きていく

「私は治します」スキルス胃がんと闘う妻は毅然と答えた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 検査を受けた大学病院の消化器内科の担当医からは、「精神的なものではないか?」と言われましたが、Rさんは納得できませんでした。そこで、5月の連休後には紹介状を持ってB病院に足を運んだのですが、その頃は脱水もあってつらい感じで、体重は元気な時より8キロも痩せたと話されていました。

 さっそく行われた胃内視鏡検査では胃の襞が太くなっていて、バリウムによる胃エックス線検査では胃の出口のところが狭く細くなっていました。典型的なスキルス胃がんでした。さらに、CT検査で腹水を認めたことから、「がん性腹膜炎で手術は困難」と判断されました。

 その際、スキルス胃がんの特徴として「がんが胃粘膜の下に潜って進展し、その初期では胃内視鏡で見逃されることがある」と説明されました。Rさんと夫はとても落胆し、「大学病院なのにどうしてあの時、診断できなかったのか」と納得できませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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