8月最初の週末に起きたテキサスとオハイオ2つの銃乱射事件では、合わせて少なくとも31人の命が失われました。
それに対しトランプ大統領から「銃撃の原因になっているのは心の病など精神疾患」という発言があり、医療関係者からの反論が相次いでいます。
米国心理学協会は次のような声明を発表しました。
「事件を精神疾患のせいにするのは事実無根であり患者を社会的に辱めるもの。精神疾患のあるアメリカ人の比率は世界の国々と比べてほぼ同じなのにもかかわらず、他国ではこのような銃撃は頻繁には起きていない」
その他国との違いについてこう述べています。
「アメリカには世界の人口の5%が住んでいるが、世界の銃乱射事件の3割以上がアメリカで起きている。では、いったい何が違うのか。その理由として、世界中で一般人が所有する約6億5000万丁の銃の半分をアメリカ人が所有している――。銃へのアクセスのしやすさこそが多くの死をもたらしている」
さらに、「心の病のせいにすることで、本当の問題解決を難しくしている」と訴えています。
実際に心の病を持つ人で暴力的な行為に走るケースはごくわずか、むしろ暴力の犠牲になるケースの方が多いと専門家は指摘します。
また、過去100年の大量殺人の犯人で精神疾患が認められた者は2割に過ぎず、残り8割は怒りや孤独、反抗や嫉妬など、誰もが経験する問題が原因だったという研究結果もあります。
アメリカでは憲法修正第2条の「自衛権」のために銃規制が難しく、銃撃事件が起こるたびに同様の論争が繰り返されているのが現状です。
今回の事件を受け、議会は精神疾患などで「危険」と通報された人物から銃を取り上げる「レッド・フラッグ法」の成立を目指しています。しかし、それで立て続けに起きる銃乱射をどれだけ防ぐことができるのか、懐疑的な見方も少なくありません。
ニューヨークからお届けします。