病気を近づけない体のメンテナンス

【膝】体重1kg減で片足への負担が2kg~3kg軽くなる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 中高年に起こる膝痛の主な原因は、肥満や筋力低下によって膝関節の軟骨がすり減り、骨が変形することで発症する「変形性膝関節症」だ。厚労省の推計では、国内の患者は約1000万人、潜在的な患者は約3000万人とされている。立ち姿勢でいるときは両方の膝で体重を支えているが、歩いているときには片膝に体重の2~3倍も負荷がかかっている。さらに、階段の上り下りになると、6~7倍の負荷が片膝にかかる。それだけ体重は膝への負担に大きく関係しているのだ。

 NTT東日本関東病院・整形外科(東京都品川区)の山田高嗣主任医長が言う。

「膝痛予防の基本は、まずは体重の管理です。体重が1キロ減ると、歩くときに片膝にかかる負荷は2~3キロ軽くなるとされます。一般的には膝痛は筋力低下が起こる60歳すぎの発症が多いのですが、肥満があると発症が早くなる。肥満の人は、できるだけ標準体重に近づけることです」

 標準体重を出す計算式はいくつかある。例えば、身長が150センチ以下であれば〈(身長[センチ]マイナス100)×0・9〉、BMI(体格指数)の適正値22を用いた算式では〈身長[メートル]×身長[メートル]×22〉となる。身長170センチの人であれば、標準体重はだいたい63キロだ。

 運動習慣は、減量のために重要で、膝を支える筋力を強化して膝への負担を減らす意味でも、膝痛予防にとって大切である。しかし、ランニングなどの激しい運動は膝への負荷が強すぎる。最も勧められるのは、適度なウオーキングの習慣だ。

「高齢者の方でも膝痛予防のために、押し車や杖を使って休みながらでいいので、1日最低30分くらいは屋外を歩いた方がいい。すでに膝が痛い人であれば、プールでの水中ウオーキングをお勧めします。休みながら無理をしない程度に歩く。痛みが出ても膝を支える筋肉を使っていないと、軟骨の減りをさらに悪化させてしまいます」(山田主任医長)

 日常生活の体勢も膝痛の発生に影響する。仕事などで仕方なく、立ちっぱなし(膝を伸ばしっぱなし)、膝を曲げっぱなしの時間が多い人は、30分に1回くらいは屈伸運動をするように心掛けよう。

 お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック(東京都千代田区)の銅冶英雄院長は、「関節を適正に動かすことが膝痛予防になる」と、2つの膝痛体操を習慣にすることを勧める。

 1つは「膝伸ばし体操」。①椅子などに浅く腰かけ、片方の足を伸ばして前に出し、膝のお皿の上に両方の手のひらを当てる。②両手に力を込めて膝を垂直に押し、膝裏が伸びきったと感じるまで力をゆっくり加える。そのままの状態を1、2秒保ったら力を抜く。これを片膝ずつ、1セット10回。1日5~6セット行う。

 もう1つは「膝曲げ体操」。①片側の足を椅子や台の上に乗せ、その膝の上に両方の手のひらを添える。②体の重心を前方に移動させながら膝を前に突き出し、深く曲げていく。限界まで曲げたところで1、2秒保ったら、元の姿勢に戻す。これを片膝ずつ、1セット10回。1日5~6セット行う。

 すでに膝痛がある人の場合には、痛みのある膝に対して膝伸ばし体操と膝曲げ体操をやってみて、痛みが改善する方の膝痛体操を習慣にするといいという。

■サプリよりバランスのとれた食事と30分ごとの屈伸運動

 また、膝痛予防には「内科的疾患にならないようにすることも大切」と、山田主任医長は言う。

「例えば、糖尿病や腎臓病、動脈硬化が進む病気にかかると、骨を構成している成分のコラーゲンの質が悪くなることが分かっています。ですから生活習慣病にならないように食事や運動に気をつけること、持病のある人は、しっかりコントロールすることが膝の健康につながります」

 薬局などで膝痛に効くとされるサプリメントが数多く販売されている。グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンなどの成分を口から取って、実際に効果はあるのか。

「国内外でさまざまな研究がされていて、効果ありの報告もあれば効果なしの報告もあり、意見が分かれていて結論が出ていません。患者さんにもよく聞かれるのですが、これらの成分の原料はタンパク質です。肉や魚、卵などの食事からタンパク質を十分に取っていれば、無理にサプリメントを取る必要はないと答えています」(銅冶院長)

 予防の基本は、体重管理と適度な運動。心掛けておこう。

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