性感染症最前線

興奮が高まると分泌 いわゆる“ガマン汁”の正体と役割は?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 性的興奮が高まると、尿道口から無色透明の液体が出てくる。いわゆる「ガマン汁」や「先走り液」と呼ばれるものだ。女性も、この液体の分泌によって腟が濡れてくる。どんな役割をしているのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「男性は尿道の一番奥(前立腺の下)に一対あるカウパー腺から、女性は腟口の左右にあるバルトリン腺から分泌されます。男性の尿道は尿が通るので、通常は弱酸性の状態にあります。精子は酸性に弱いため、カウパー腺液は射精までの間に尿道をアルカリ性の状態に変えるのです。それに、性交時のペニスと腟の粘膜同士の摩擦を減らす潤滑液でもあります」

 しかし、このような分泌物を作って出す“腺構造”は、分泌物を一時的にためておく場所があるため、細菌や性感染症の病原体が入り込んで炎症が起こりやすい。特に、女性器(小陰唇の中)は外部と接する穴が、腟、尿道、バルトリン腺が2つ、スキーン腺が2つと、6カ所もある。そのため、それぞれの穴において感染が起こりやすいのだ。

 ちなみに女性のスキーン腺は尿道口付近に一対あり、男性の前立腺に相当する。前立腺から分泌される前立腺液は精液の一部となり、精子に栄養を与えたり、精子を保護する役割がある。スキーン腺も前立腺液の成分に似た液体を分泌するが、バルトリン腺液より量は少ないという。

 また、スキーン腺は女性の“潮吹き”にも関係しているという説もあるが、ハッキリ分かっていない。スキーン腺の穴の大きさは個人差があり、中には完全に消失している人もいるという。

 一方、男性器で外部と接する穴は尿道口だけ。そのため淋(りん)菌やクラミジアなどの性感染症の典型的な症状は尿道炎となる。

 女性は尿道が短く膀胱炎も起こしやすいが、男性が膀胱炎になりにくいのは、単に尿道が長いというだけではないのだ。

「男性の尿道には『尿道側管』という感染防御機構があるのです。これは、尿道粘膜に迷路のように管がいくつも走っていて、形や数は人によって異なります。病原体は尿道口から尿道側管に入り込みますが、袋小路になっているので、それ以上奥にいけないのです。淋病やクラミジアに感染すると、尿道口から膿(うみ)などの液体が出ますが、それは尿道と尿道側管にたまっているものが出てくるのです」

 もちろん、病原体が尿道側管をすり抜けて上行する場合もある。しかし、男性では膀胱の前に前立腺がある。病原体が前立腺の腺構造にすみ着くと「前立腺炎」を引き起こすというわけだ。

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