医師の常套句「様子を見ましょう」の真意

高血圧編<3>“150未満または95未満”はちょっと高めだが…

140/90が薬を使うかどうかの分岐点
140/90が薬を使うかどうかの分岐点

 130~139/80~89の血圧は「高値」血圧で、その数値を超えると、高血圧と診断されます。140/90が、薬を使うかどうかの分岐点になるということは、これまでお話ししました。

 外来で患者さんを診察していると、「ちょっと血圧が高めかな」と思いながら降圧剤の処方を控えることがあります。高血圧には3段階あって、Ⅰ度の「140~159未満または90~99未満」の中でも、「150未満または95未満」の方です。

 血圧の数値がその程度でも、ほかに条件があります。一つは、年齢がおおむね60歳以下。もう一つは、血圧のほかにメタボ検査や肝機能などに異常がないこと。そういう方は、「ちょっと数値が高いけど、様子を見ましょう」となります。生活習慣の改善で血圧が下がるかチェックしようというわけです。

 生活習慣の改善で重要なのは、減塩。日本人の食塩摂取量は1日12グラム前後ですが、少しずつ減らして半分に。運動は、できれば毎日30分以上が目標で、1回10分以上ならこま切れの運動を合計30分以上でもOKです。食事は、野菜と魚、果物を積極的に取り、肉や揚げ物など脂っこい料理を控える。そうやって減量しながら、適量飲酒を心掛け、たばこを吸っている人は禁煙します。

 耳にタコでしょうが、どれか一つを改善するだけでも効果があります。毎日、晩酌される方なら2日、休肝日を設ける。運動不足なら、運動してみる。すべてをまとめてやろうとすると大変ですが、どれか一つ、やりやすいことからスタートすると意外とできます。それで血圧が下がると、励みになって、生活改善が持続するのです。

 Ⅱ度の「160~179または100~109」は明らかな高血圧。Ⅲ度の「180以上または110以上」は、すぐに治療しないと、心筋梗塞や脳卒中といった血管病を起こしかねません。

 生活改善による血圧改善効果が出やすいということは、それだけ血管の弾力性が保たれている証拠。高齢になると、大動脈が硬くなり、血液を送り出すときに、血管が膨らみにくくなります。そのため収縮期血圧は上がりやすいのに、拡張期血圧は下がりやすいということが起こる。それが高齢者に多い「140以上かつ90未満」というタイプの高血圧です。

「150未満または95未満」は「ちょっと高めの血圧」ですが、その水準で生活改善で様子を見られるのは、最後のチャンスということです。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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