進化する糖尿病治療法

ただ血糖値を下げるだけでは患者の予後は良くならない

“プラスアルファ”が重要(C)PIXTA

 “プラスアルファ”の作用がある薬の方が、糖尿病患者さんにリスクが高い心筋梗塞や脳卒中など心血管障害のリスクを下げ、予後をよりよくする。今年6月に米国で行われた糖尿病学会でも、SGLT2阻害薬への注目度はかなり高いものでした。一方で、日本では市場の7割を占めるDPP―4阻害薬は、残念ながら心筋梗塞や脳卒中などのリスクを下げるところまでは至らない、という発表もなされたのです。

 DPP―4阻害薬の国内での発売は2010年。DPP―4阻害薬は「インスリンの分泌を促す作用のあるインクレチンを分解するDPP―4を阻害する」「血糖上昇作用のあるホルモンであるグルカゴンの分泌を低下させる」「肝臓で行われる最低限の血糖値を維持する体の機能をよくする」といった働きで血糖を下げるため、発売以降、処方箋シェアを急激に伸ばしました。糖尿病の薬の副作用である低血糖を起こしにくい点、同じく糖尿病薬の副作用である消化器症状を起こしにくいといった点などから「使いやすい」と評価されたのも、シェアが伸びた理由です。

3 / 4 ページ

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

関連記事