進化する糖尿病治療法

ただ血糖値を下げるだけでは患者の予後は良くならない

“プラスアルファ”が重要(C)PIXTA

 ところが、体重は増加させないが、減少にも結びつかない薬であることも、発売後の研究で分かったのです。肥満度を示すBMIが低い人は、HbA1cが6%未満まで低下するけれど、BMI30以上の肥満の人は薬を飲んでもHbA1c6%よりは下がらない。HbA1cは血糖コントロール目標値のひとつなので、「肥満にも肥満じゃない人にも効くが、痩せている人により効く」という結果は、非常に使いやすいが血管障害のリスク低下といった側面からみると残念な部分もあるとも言えるでしょう。

 米国の糖尿病学会ではここ数年、「糖尿病治療には心臓、腎臓、脳の病気も予防する薬を使おう」という動きがあり、多くの患者さんの臨床結果に基づいた試験結果から、具体的に薬品名を出して発表が行われるようになっています。

 今回の学会での話が後押しになり、今後の糖尿病治療での薬の選び方は大きく変わっていくかもしれません。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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