猛暑に気を付けたい病気

【帯状疱疹】皮膚の痛みや水膨れが現れたらすぐ受診すべき

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 皮膚疾患のひとつ、帯状疱疹は、子どものころに水ぼうそうにかかったことがある人なら、だれでもリスクがある病気だ。日本皮膚科学会認定専門医で帯状疱疹に詳しい「中野皮膚科クリニック」(東京・中野)の松尾光馬院長が言う。

「帯状疱疹は、水ぼうそうにかからないと発症しません。水ぼうそうの原因ウイルスである『水痘・帯状疱疹ウイルス』は、水ぼうそうが治った後も脳や脊髄の感覚神経節に潜んでいます。普段はおとなしくしているのですが、加齢や過労などで体の免疫力が低下すると活性化し、増殖して神経に沿って皮膚の表面に移動する。その時に神経を傷つけて痛みを起こすのです」

 この帯状疱疹、意外に思うかもしれないが、「猛暑に気を付けたい病気」だ。「夏に水ぼうそうが“減る”」ということと関係している。

「私たちの体は、ウイルスに感染すると、それを攻撃する細胞性免疫という免疫を高めるようにできています。水ぼうそうに感染した後に上がった免疫は、水ぼうそうが増える冬に水ぼうそうの子どもと接すると、水痘・帯状疱疹ウイルスが新たに体に入ってさらに高まります。ところが夏は水ぼうそうが少なく、免疫が高まりにくい。それによって帯状疱疹が発症しやすくなると推測されています」(松尾院長=以下同)

 現在も進行中の世界最大規模の帯状疱疹の疫学調査「宮崎スタディ」がある。1997~2011年の15年間にわたり、宮崎県皮膚科医会に属する皮膚科診療所39施設と総合病院の皮膚科7施設を受診した帯状疱疹の初診患者7万5789人の集計結果によれば、「帯状疱疹は冬に減少し、夏に1・22倍増加」。

 また、香川県小豆島で50歳以上の住民約1万2500人を3年間追跡調査した結果でも、水ぼうそうが少ない7~9月に帯状疱疹が多いという結果だった。

「ただし、2014年から水痘ワクチン(水ぼうそうのワクチン)が小児において定期接種になり、水ぼうそうは減少しています。冬の流行も見られなくなりました。つまり、“冬は帯状疱疹が少なくなる”という状況が変わってきているのです」

 帯状疱疹の症状は、ピリピリする皮膚の痛み、赤い発疹、水膨れなど。体の片側に出て、知覚神経に沿って症状が表れるのも特徴だ。

「痛みがそれほどでない人、赤い発疹が狭い範囲にしかできない人、放っておいても自然に治る人などもいます。しかし、帯状疱疹は赤い発疹や水膨れが出てきたら速やかに皮膚科を受診すべき。治療が遅れると、赤い発疹や水膨れなどの症状はなくなっているのに痛みだけが続く『帯状疱疹後神経痛』に移行する人もいます」

 どうしても発症したくない人には、帯状疱疹に対するワクチン接種という手もある。

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