後悔しない認知症

高島忠夫さんの家族が知らずに悔やんだ介護サービス

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 だが、障害年金、生活保護などと同様、政府、自治体はこうした制度について国民の側に立った積極的な情報発信をしているとは言い難い。

 少し前に俳優の高島忠夫さんが亡くなった。20年ほど前にうつ病を発症、一時期芸能界に復帰したものの、その後パーキンソン病などを患い、老衰で亡くなるまで長く要介護状態だったとされる。だが、妻の寿美花代さん、息子の政宏さん、政伸さんは介護保険制度の存在を知らず、介護費用をすべて自費で賄っていたという。結果、介護費用に備えるために多くの資産を売却したという。

「女性セブン」の取材に政宏さんは、忠夫さんの財産はほとんど残っていないことを告白した上でこう答えている。

「主治医に相談したら東京・世田谷区のケアマネジャーさんを紹介されて。『うちの父も介護保険を使えるんですか?』と聞いたら、『ええ、使えます』と言われました。〈中略〉階段の手すりの設置から介護ベッドやトイレの手すりまで、こんなものにも保険サービスが使えるのかと驚きました」(同誌8月22・29日号)

 さらに「政宏は何度も『介護保険さえ、最初から知っていれば』と繰り返した」と同誌は報じている。認知症の親のためにも、自身のためにも、子どもは介護保険制度を正しく理解し積極的に利用すべきだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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