医療用の漢方と保険診療についてのお話です。医療用医薬品を処方箋でもらう場合と薬店で購入する場合の差や、経済的な違いについては以前お話ししました。今回は「適応」について取り上げます。
医療用医薬品は、処方箋を薬局に持っていけば一般的には3割負担でもらうことができます。健康保険が利くからです。ただし、どんな薬でも処方できるというわけではなく、「この薬はこの病気とこの病気に出したときのみ保険が利く」といったように、処方できる病気が決まっているのです。
こうした保険が使える病気や症状を「適応症」といいます。薬は適応のある病気にしか処方できない(処方しても保険が適応されない)のです。適応症は、基本的には薬の添付文書の「効能・効果」に記載されているものが該当します。
「効能・効果」は、最近の薬であればすべて臨床試験に基づいて記載されています。しかし、まだ臨床試験がなかった時代から使われている漢方薬でも、医療用であれば「効能・効果」が記されていて、これに基づいて保険が利くか否かが決まっています。
そのため、漢方薬には西洋薬にはない特有の「効能・効果」が書かれています。たとえば、不定愁訴、冷え、のぼせ、食欲不振、夜泣きなどがそれにあたります。つまり、近代的な西洋薬では保険診療で処方できないような病気や症状に対しても、漢方であれば使えるものもあるということです。言い換えれば、それらの病気や症状は漢方の得意分野であるといえます。
現代の医療はエビデンス(科学的根拠)至上主義ともいえますが、エビデンスのない時代の薬しか保険診療で認められていない病気や症状もある――。そんなところにも漢方の可能性を感じます。
市販薬との正しい付き合い方