がんと向き合い生きていく

迷惑をかけるから安楽死を──それではあまりに悲惨過ぎる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 また、彼らは「家族などに世話や迷惑をかけたくない」とも言っています。しかしいくら健康でも、人は年を重ねるほど体力は衰え、身体的な苦痛は増えます。頭がしっかりしていても衰えてきます。人間、どうしても他人に迷惑をかけることになってくるのです。

 いまの日本は、多くは独居か1世帯2人です。一方が年老いて、あるいは生計のために仕事をしていて、もう一方の家族を世話するのは難しくなってきています。長時間ヘルパーさんを雇えるお金持ちは別ですが、家族に迷惑をかけないことは無理になってくるのです。

 だからこそ、介護施設などを充実させ、社会が面倒をみる、生きていくのに迷惑をかけてもいい社会……そのような環境にしなければならないと思います。生きていていいんだよ。そして、生きていくために迷惑をかけてもいいんだよ……。みんなが「安心して生きていられる」と思える社会です。日本は超高齢社会なのに、自分のことは自分でどうぞといった「自助」と言われる社会はおかしいのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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