家族に迷惑をかける、だから安楽死を考える。それではあまりに悲惨すぎます。安楽死は人を殺すことです。ですから、安楽死について議論することもない、安楽死なんていう言葉もない――そういう世の中になって欲しいと思います。「何を理想ばかり言っているのか」と言われそうですが、それでも、そう思っています。
家族など周囲の人と相談して、自分の最期の希望を話しておくこと(人生会議)も必要かもしれません。しかし、本当に死期がすぐそこに迫った時には、思いが違ってくる、「生きたい」という気持ちが湧いてくる患者さんを私はたくさん見てきました。人は生き物、生物ですから、それも当たり前でしょう。
人は、自分の意思で生まれてきたわけではありません。自分でつくった体でもありません。それなのに、死を自分だけで、自分のことだけを考えて決められるのでしょうか。死に対しての自己決定権はあるのでしょうか。
がんと向き合い生きていく