猛暑に気を付けたい病気

【心房細動】予後が悪い脳梗塞や心不全につながる危険あり

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 暑い夏は「心房細動」にも注意したい。不整脈のひとつで、心臓が細かく不規則に収縮を繰り返し、動悸や息切れ症状が表れる。

 心房細動だけでは命に関わるような病気ではないが、血流が悪くなるため、血栓ができやすくなり、血栓が移動して脳の血管で詰まると命の危険がある心原性脳梗塞を引き起こす。心不全を合併して、それが死亡の原因になるケースもある。

 加齢が大きなリスク要因で、超高齢社会の日本では現在80万人の心房細動患者がいるとされ、2030年には100万人を突破するとみられている。猛暑下では、予備群も含めて気を付けなければならない人は多い。

 順天堂大学医学部付属順天堂医院前院長で、心臓血管外科教授の天野篤氏は言う。

「夏場は脱水状態になりやすく、そうなると心臓の働きが弱まります。体内の水分が不足すると血液の粘度が上がって流れにくくなるため、それだけ心臓の負担が増大するのです。さらに、気温が高くなると、体内の熱を放散するために、効率的に血液を循環させようとして心拍数が上がります。こうした状況によって、とりわけ、高齢者は心房細動を誘発しやすくなるのです」

 心房細動にプラスして脱水状態になって血液がドロドロになると、心臓内で血栓ができやすくなる。それだけ猛暑はリスクが高いといえるのだ。

■まずは脱水の予防が大切

 すでに心房細動を抱えている人はもちろん、自分は大丈夫だと思っている人も注意が必要だ。心房細動は、きちんと診断されないまま放置されている場合が少なくない。自覚症状が「体が重い」とか「疲れやすい」といった軽いケースも多く、普段から脈拍を測るなどして注意していないと、なかなか気付かないのだ。猛暑で体調が優れず夏バテだろうと思っていたら、突然ろれつが回らなくなり、心房細動による心原性脳梗塞だったという事例もある。

「心房細動は、肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を抱えている人や、その予備群で発症リスクが高くなります。心当たりがある人は脱水を起こさないような対策を講じることが重要です。基本は適度に水分を補給することで、できれば経口補水液が望ましい。脱水状態で失われるナトリウムやカリウムといった電解質と糖質がバランスよく配合されているからです。それらが含まれているスポーツドリンクを飲んでいる人も少なくありませんが、スポーツドリンクには塩分や糖分も多く含まれています。高血圧や高血糖を抱えている人や高齢者は飲み過ぎがマイナスになる場合もあるのです」(天野氏)

 また、アルコールを控えめにしたほうがいい。利尿作用があり、脱水を促すからだ。とりわけ夏にうまいビールは利尿作用が強く、ビールを1リットル飲むと、1.1リットルの水分を失うといわれている。酔っぱらってそのまま寝てしまい、夜間に脱水状態を招くようなことは避けなければならない。

 心房細動を発症した場合、症状が軽いからと放置せず、適切なタイミングで治療を始めることが大切だ。

「早期に発見すれば、薬物治療の効果が見込める上、カテーテルを挿入して原因となっている部分を高周波の電気で焼き切る『カテーテルアブレーション』という治療で完治も望めます」(天野氏)

 猛暑で、体にいつもとは異なるような違和感を覚えたら、心房細動の可能性も頭に入れて、早めに医療機関を受診したほうがいい。

関連記事