役に立つオモシロ医学論文

43歳超の酒好き男性は飲酒事故に繋がる眠気に襲われやすい

サービスエリアで一息つきながら…
サービスエリアで一息つきながら…(C)日刊ゲンダイ

 トラックなど商用車を運転する人にとって、日中の眠気は交通事故につながりかねない重要な健康問題です。また、飲酒習慣は、睡眠の質を悪化させることもあり、翌日の注意力低下や運転パフォーマンス低下の原因になりえます。

 商用車ドライバーを対象に、飲酒習慣と日中の眠気の関連性を検討した研究論文が、2019年7月2日付で産業医学に関する専門誌の電子版に掲載されました。

 研究では、全日本トラック協会に登録されている商用車ドライバー1422人(平均43歳)の男性を対象に、飲酒量や日中の眠気などについてアンケート調査を行っています。

 眠気については、エプワース眠気尺度を用いて0~24点で評価し、日中に強い眠気のある人は11点以上とされました。飲酒量は、体重が60キロの人であれば、缶ビール(350ミリリットル)2缶未満で軽度飲酒、2~4缶で中等度飲酒、4缶以上で大量飲酒としています。

 解析の結果、飲酒量と日中の強い眠気について、43歳未満では明確な関連性は示されませんでしたが、43歳以上では飲酒をしない人と比べ、軽度の飲酒者で42%増加傾向、中等度の飲酒者で53%増加傾向、大量飲酒者で3.37倍増加傾向と、統計学的にも有意に多いという結果でした。

 飲酒習慣のある人では、精神面で不調を感じている人も少なくないでしょう。催眠鎮静薬を定期的に服用している可能性もあります。ですから、飲酒習慣そのものが、直接的に日中の眠気を引き起こしているかどうかについては議論の余地があります。

 とはいえ、大量飲酒は翌日の運転パフォーマンス低下につながることは経験的にも明らかでしょう。交通事故のリスクを少しでも減らすためにも、前日の飲酒は控えめにした方がよいといえそうです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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