【Q】インプラント治療にリスクはありますか?
【A】全身的にも局所的にも、さまざまなリスクが挙げられます。インプラント治療は歯を失った部位の顎の骨に「インプラント体」と呼ばれるネジのような形をした金属を埋める手術が必要になり、基本的には局所麻酔をして行います。複数本を埋入する場合や、患者さんの不安を軽減するために専門の麻酔科医を呼んで鎮静してもらう場合もあります。いずれにせよ生体を傷つけることには変わりありませんので、リスクは当然あるのです。
外科手術や骨と軟組織(歯肉)のマネジメントを行うので、全身状態の把握と適切な診断および治療技術が必須です。埋入したインプラント体に機能性、審美性、清掃性を備えた上部構造(かぶせ物)を装着して、長期間維持するためのメンテナンス技術も求められます。
まずは局所的にインプラントを埋入することができる状態かどうか、口腔内の状態やCTを見て判断します。下顎であれば、下歯槽神経を損傷しない程度の余裕がある骨かどうか。上顎であれば、副鼻腔まで貫通しないだけの骨の厚みがあるかどうかなど、細かいものを含めると多くのリスクが考えられます。
その上で、そもそも手術自体を受けられる状態かどうか、血液検査のデータを見て患者さんの全身的な状態を判断します。日本口腔インプラント学会では、こういった全身的、局所的な評価をした上で、状況によっては治療を中止することも提案しているほどです。
ある患者さんにインプラント治療のリスクとCT検査、血液検査の必要性を話したところ、「よその医院ではその場でインプラントをしようと言われたのに、何ですぐ処置してくれないんだ」と、受付のスタッフや他の患者さんに聞こえるような声を上げ、怒って帰られてしまったことがありました。
リスクを考えず、適切な診断もせずに手術をして、もし何かあったとき一番の犠牲者は患者さん自身だということを、まずご理解いただきたいと思います。
(構成=小澤美佳)
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