むしろ心拍数と体温が上昇 高齢者は扇風機が“毒”になる

重要なのは「気温」より「湿度」/(C)日刊ゲンダイ

 そもそも直腸温や膀胱温、肺動脈温などの深部体温は、視床下部にある体温中枢の働きで37度前後に設定されている。この体温が、ヒトの生命を維持するのに必要なさまざまな酵素を効率良く作用させるのに最適な環境だからだ。

 例えば、体温が41度を超えると酵素の変性や細胞内のエネルギー産生工場であるミトコンドリアの機能低下を起こす。その結果、細胞はエネルギー不足となり細胞障害が起きる。これを避けるために、猛暑で気温が上がると、体温を下げるメカニズムが働く。

「深部体温が上がると内臓の熱を血液が吸収。熱がこもった血液が皮膚下の血管に集まり、そこから染み出した水分を汗として放出して血液を冷却します。若いうちはこのシステムが正常に機能しますが、高齢者は低下する。そのため深部体温が急上昇して内臓に異常が起きるのです」

 こうしたことから世界保健機関(WHO)も、猛暑から体を守るガイドラインとして、「気温35度以上の場合、扇風機の使用では熱中症は予防できない」と注意を促している。米国環境保護庁も、室温が32度以上になったら、扇風機を自分に向けてはいけない、としているという。

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