医師の常套句「様子を見ましょう」の真意

正常域でも医師は警戒 空腹時血糖値は100超えで要注意

「まだ糖尿病でないから」と都合よく解釈してはいけない
「まだ糖尿病でないから」と都合よく解釈してはいけない
糖尿病編 #1

 糖尿病には、インスリンを産生できなくなる1型とメタボリックシンドロームの延長線上にある2型があります。1型は一生インスリン注射が欠かせずとても厄介な病気ですが、ここでは9割を占める2型を対象にお話をします。

 血液検査でチェックする空腹時血糖値は、110㎎/デシリットル未満が正常で、126以上は糖尿病と診断。110~126が、境界型と呼ばれる状態、いわゆる予備群です。

 糖尿病が生活習慣病の中でも特に恐れられているのは、合併症があるから。それによって失明や人工透析になると、生活の質がガクンと下がり、神経障害によって感覚が鈍くなると、ちょっとした傷の痛みに気づかず壊疽を起こすことさえあります。そういった血管障害の末路が、心筋梗塞や脳卒中です。

 ですから、予備群で「様子を見ましょう」と言われても、「まだ糖尿病でないから大丈夫」と都合よく解釈してはいけません。医師は、「糖尿病になるのは時間の問題。慎重に数値を見守っていこう」と考えていて、なるべく糖尿病に悪影響を起こさないことを念頭に入れているのです。

 月並みですが、食事は腹八分目にして野菜を積極的に取り、少しずつでも体を動かして、減量に取り組むこと。禁煙とストレス発散も大切です。そう、生活改善に頑張ってほしいのが、このレベルといえます。

 先ほど空腹時血糖値は110未満が正常と書きました。確かにその通りなのですが、本当に糖尿病でない人は、100を超えることがまずありません。100~110の人も“予備軍”で、そういう人は食後の高血糖が下がりにくい状態にあるといわれています。

 100を少し超えた状態が何度か続くと、医師は糖尿病への移行を警戒し始めるのです。そんなときに行われる、より精密な検査がブドウ糖負荷試験。検査する朝まで10時間以上絶食した空腹状態でブドウ糖75グラムを水に溶かしたものを飲み、30分、1時間、2時間後に血糖値を測ります。

 この検査でチェックするのは、食後高血糖の改善度合いで、改善が鈍いと、糖尿病と診断されます。つまり、空腹時血糖値が100を超えたくらいで「様子を見ましょう」と言われたら、医師は糖尿病を警戒しているということ。決して軽く考えず、生活改善に取り組んでください。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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