歌って健康になる

伊の大衆歌曲「カンツォーネ」でインナーマッスル活性化

戸山英二日本カンツォーネ協会会長(左)/
戸山英二日本カンツォーネ協会会長(左)/(C)日刊ゲンダイ

 歌う際の呼吸法には「胸式」と「腹式」がある。胸式は肺を覆っている肋骨を横に広げて、主に肺の上の方に空気を入れる呼吸法のこと。このとき胸や肩や首の筋肉を使うため、これらの部分が緊張し、喉に力が入りやすい。筋肉を多く使うのでリラックスして歌うことができにくい。

 一方、腹式呼吸は、肺の下のみぞおち辺りにある横隔膜を下げることで、肺の下の方に空気が入ってお腹が膨らむ呼吸法。呼吸時に胸や肩の筋肉を使わないので喉を緊張させずに歌うことができる。

 この腹式呼吸を駆使して歌い上げるのが、イタリアの大衆歌曲「カンツォーネ」だ。

 東京・目黒区内の音楽スタジオで、男性2、3人を含む数人の女性たちが、ピアノ伴奏に合わせて「カンツォーネ」を歌っていた。吸い込まれそうな朗々とした歌声である。指導者は「日本カンツォーネ協会」の戸山英二会長(78)だ。

「カンツォーネを歌う基本発声は、お腹の中から絞り出す。これができないと喉を痛めてしまいカンツォーネは歌い続けられません。私はこの発声を『戸山英二イタリア式若返り音楽療法』と命名しております」

「オー・ソレ・ミヨ」や「忘れな草」「サンタ・ルチア」の代表作で知られるカンツォーネは、イタリアで400~500年前から歌われてきた“民謡”である。

 戸山会長は武蔵野音楽大学声楽科卒業後、イタリアに留学し、本場で二十数年間、カンツォーネを学んだ。これまで日本やイタリアで受けた受賞数は数えきれない。 

「石井好子音楽事務所」(シャンソン歌手=1922~2010年)の専属歌手第1号だった戸山会長は、日本カンツォーネ界の第一人者だ。

「私はこの年で、まだ一度も風邪をひいたことがありません。病院も行ったことがない。顔のつやもいいでしょう」

 1曲3~5分というカンツォーネは、空気を切り裂くような高い声や、伸びのある音声が要求される。

 日々、カンツォーネを歌うことによって普段使われていない腹の回りにある横隔膜、腹横筋など(インナーマッスル)が鍛えられて活性化し、血流がよくなっているのだ。

 目黒区内の音楽スタジオで定例のレッスンに参加していた女性たちは60~70代。カンツォーネ歴10、20年というプロ級のベテランたちである。コンサート経験のある女性も何人もいる。

 参加者に「健康」と「カンツォーネ」との関係について尋ねてみると、「あなた(記者)にこの場で、私のお腹を見せたいほどにシワがないのが自慢なの。思い切り歌うことによって内臓や肺を元気にして、それにイタリア語も学んでいますからボケることもありません」(60代後半の女性)と言う。その言葉を引き取って戸山会長が続ける。

「どうです、それに若々しく輝いている人が多いでしょう。カンツォーネは愛や哀愁の歌ですから、歌い続けていると年をとりません。むしろ若返ります。私のレッスンには80代の女性もたくさんいて最高年齢で、94歳の女性もいます」

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