後悔しない認知症

介護認定の際に「よそ行きの自分」になってしまう親がいる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回、介護保険の仕組みを正しく理解し、制度がフォローするサービスを利用することで、認知症の高齢者が機嫌よく暮らし、その子どもや家族の負担が軽減されるということを書いた。その前提となるのが認知症の親の要支援、要介護の認定だ。

 認定を受けるためには市区町村の窓口での申請、介護認定調査員の調査、かかりつけ医の意見書などが必要となる。その際に高齢の親を持つ子どもが気をつけなければならないことがある。それはふだん「ボケた、ボケた」という親が、介護認定調査員や医者の前で「よそ行きの自分」になってしまうことだ。日常生活において明らかに認知症の症状を呈していても、イザ、調査、診断のシーンでは、「自分は正常だ」と見せたかったり、あるいは「恥ずかしい」という心理が働くのか、「綻び」を見せないように振る舞ってしまうのだ。

 また脳というのは緊張状態のときは普段より高い能力を示すことがある。これは悪いことではないが、それによって正しい認定が行われなければ、せっかくの介護サービスを受けられなかったり、限定されたりする可能性も生じる。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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