市販薬との正しい付き合い方

漢方は複数の成分を混ぜ合わせることで初めて効果が表れる

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 保険診療において、薬は処方できる病気や症状が決まっています。これは漢方でも同様ですが、処方できる病気や症状が西洋薬とは異なっている――つまり、保険診療で漢方だけが処方できる病気や症状があるということを前回お話ししました。西洋薬と漢方には、保険診療上で大きな違いがあるということです。

 西洋薬と漢方の違いは他にもあります。原料(成分)に関しては、漢方は天然物由来で西洋薬は化学合成品も多く使われていますが、今回は「成分の種類」についてお話しします。

 一言でいえば、漢方は複数の成分が合わさって効果を発揮し、西洋薬は単一の成分で効果を発揮しています。これは漢方の特徴のひとつです。漢方は、複数の生薬成分の配合剤ですが、この「配合剤である」ということが重要で、仮にそれぞれ単一の成分(生薬)だけを取り出して飲んでも、効かないか、効き目が非常に弱いことが明らかになっています。

 これは、「ポリファーマシー」が問題視されている西洋薬とは大きく異なるポイントといえます。ポリファーマシーとは、「複数の薬を併用すること」=「多剤併用」を指します。6剤以上の併用で副作用のリスクが高くなるため、できる限り種類を減らす努力をすることが重要とされています。

 とりわけ、合併症の多い患者や慢性疾患の患者がポリファーマシーになりやすい傾向にあります。どうしても治療上必要な薬は仕方がないとして、とりあえず漫然と薬を使用するのは避け、自分にとって本当に必要な薬なのかどうかを定期的に見直すことが大切です。このように西洋薬はできる限り複数の併用を避けた方がいいとされているのですが、漢方は複数を併用する(成分を複数混ぜる)ことで初めて効果が表れます。

 このように、両者の併用に対する考え方はまったく逆で、大きな違いになっているのです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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