それでも、病気が良くなっているのに何十年も入院していた患者が退院して社会に出るには、いろいろな困難がありました。すでに親は亡くなり、兄弟家族からは「存在しない人」になっていた方も少なくなかったのです。そのため、精神科病院の中には、仕方なく入院病棟の一部の名称を「アパート」に変更したところもありました。良くなっても長く入院していた患者はそのまま入院を続け、“アパートの住民”となったのです。しかし、それでは「一般社会の中で暮らす」という考え方とは違います。
日本は、人権が最も守られている国のようにいわれますが、過去における統合失調症への偏見や人権無視はひどいもので、今でも不治の病と誤解したイメージを持っている方もいます。個人情報の保護をしっかりと守りながら、がんになった場合でも、本人・家族・医療関係者がチームを組み、病気に立ち向かいたいものです。
がんと向き合い生きていく