アメリカの病院で問題になっているのが「病院の騒音」です。調査によれば、病室の昼間のノイズレベルは57~72デシベルで、WHO(世界保健機関)が定めた数値35デシベルを大きく上回っています。
その原因になっているのは、点滴や人工呼吸器からの音、患者の体に接続された機器の警報音、ナースコールの呼び出し音、人の会話やスピーカーからのお知らせ、IDスキャナーの電子音、物を運ぶカートのガラガラという音など。
常に鳴り続ける音が、患者にとっては回復に必要な休息の妨げになっているだけでなく、看護師にとってはストレスや疲労の原因になっているといいます。
特に1人の患者が1日に聞く警報音は約700回で、「その8割以上は間違い」という数字があるほど。それを知る看護スタッフは本当の警報に対しても鈍感になり、反応が遅れ、医療事故の原因にもなりかねないと指摘されています。
こうしたノイズを減らそうという動きが全米の病院で広がりつつあります。新たな技術によるコミュニケーションシステムの改善、小規模なナースステーションの分散配置、音が響かない床材への交換も含まれています。
さらに、医療機器の警報音自体を見直す動きも出ています。医療機器の警報音はかなり以前に定められた基準に沿ったもので、無機質な電子音であるうえ、不協和な音程の組み合わせで不快感を感じさせるものになってしまっているといいます。これをもっと聞き心地よく、しかも正確に状況が把握できるものにできないかという研究が進められています。
ニューヨーク・タイムズによれば、イギリスのプリマス大学のジュディ・エドワーシー教授を中心に日系人のミュージシャン、ヨーコ・センらも加わって新たな警報音の開発が行われています。たとえば機器から流れる静かな音楽は、ドラムは心臓、ギターは酸素レベル、ピアノは血圧を表し、平常時はハーモニーを保っているが、問題が出ると不協和音になるという案も出ているとか。どういうものが登場するのか期待が高まります。
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