独白 愉快な“病人”たち

「赤ちゃんは元気です」と言われ安堵…岡田薫さん語る卵巣茎捻転

岡田薫さん
岡田薫さん(C)日刊ゲンダイ

 この春、無事に生まれてきてくれたのですが、本当にいろんなことが起こった出産でした。38歳で第1子を出産したときには、比較的なんの問題もなかったのに、たった2~3年でこんなに違うものかと……。

 異変は深夜、突然の激しい腹痛から始まりました。まず頭をよぎったのは「もしかして流産?」ということ。出血しているか確認したところ、それはなかったので横になってしばらく様子を見ようとしたのですが、30分もしないうちにどんどん痛みが増して、じっとしていられないほどになりました。もはや歩けそうになかったので夫を起こし、救急車を呼んでもらいました。

 じつはその翌日が、妊娠後初の検診の予約日だったんです。だからまだ赤ちゃんがいるという感覚がない妊娠4カ月程度でした。救急隊員の方には「もし婦人科の病気でなかったら、そこから別の病院に転送になり、その間は激痛が続きますけど、その産婦人科でいいですか?」という確認がありました。でも、迷わず産院を選んで正解でした。

 朝方4時ごろに病院に着いて診察を受けると、子宮がカチカチに固まっていて「子宮破裂の可能性がある」と言われました。子宮破裂となれば母子ともに生命の危険です。思わず、「先生、私、死ぬんですか?」と聞いてしまいました。すると、先生から「赤ちゃんもお母さんも助けます。そのために、ここに来たんですから」と力強い言葉をもらい、「赤ちゃんは元気です」と言われて安堵しました。

 すぐに尿管がつながれ、点滴をされ、MRI撮影などの検査の結果、「卵巣茎捻転」と診断されました。卵巣が大きく腫れて、卵巣と子宮をつなぐ管がねじれてしまい血流が止まって激痛が走るというものです。

 運ばれてから4時間後には手術になりました。しかも全身麻酔ではなく下半身麻酔の開腹手術。それが赤ちゃんにとって一番負担が少ない方法とのことでした。

 下半身麻酔なので意識はしっかりあり、手術の音、先生たちの会話、私と赤ちゃんの心音などが全部聞こえるというなんとも怖い状況でした。90分の手術時間がとっても長く感じました。

 お腹の傷は20センチぐらいでしょうか。2週間ほどの入院でした。最初の5日間は3時間ごとに赤ちゃんの様子をチェックするため、MFICU(母体胎児集中治療室)に入りました。生きているのか、弱ってやしないか、そりゃもう心配が尽きることはありませんでした。

■1カ月後には切迫流産に

 その後、無事に退院できました。でも、その1カ月後に今度は「切迫流産」になってしまったのです。自覚症状はゼロでした。たまたま妊娠5カ月で安定期に入ったので、マタニティーエアロビクスでもしようと思い、のんきに先生にその許可をもらおうとしたら、検査で子宮と膣の間の長さが、通常5~6センチのところ5ミリしかないことが分かったんです。要するに「もう出る寸前」。あと2週間遅かったら、破水して流産してしまったかもしれない状態でした。

 もちろんエアロビクスどころではなく、その場で車イスに乗せられ、子宮口を縛る手術をして絶対安静状態を強いられました。家に帰っても旅行はいけないし、腹筋に力が入ることは一切ダメで、長女を抱っこすることも止められました。安静が解けたのは出産の1週間前でした。

 妊娠中は風邪薬だって飲んじゃいけないと言われる中、MRIだの開腹手術だの、検査もいろいろしたので、なにかしら子供に影響してしまうのではないかと心配したんですけど、今のところすくすく本当に元気で、身長も体重も人並み以上の健康優良児です。

 今では笑い話ですけれど、後から聞いた話では、卵巣茎捻転のときに痛みでのたうち回る私を見て、夫は完璧に流産だと思ったそうです。そのうえドラマのワンシーンのように、医師から「子供と母体、どちらかしか助けられない場合はどうしますか?」と聞かれたときのことを勝手に妄想して、すごく迷ったというのです。思わず「それは私でしょう! そこ迷ったの?」と、びっくりしました(笑い)。

 卵巣茎捻転は、私のかかっていた産婦人科では年に1人いるかいないかぐらいの頻度だそうですが、私の知人にも1人、卵巣が腫れて卵巣茎捻転が懸念されたので、事前に手術をした人がいます。それほどポピュラーではないけれど、特別珍しいものでもありません。

 産婦人科が苦手な人は多いと思います。私もなるべくなら受診したくない。でも、今回は2度にわたる入院で長女に寂しい思いをさせ、夫や母親にも迷惑をかけました。自分のためにも、家族のためにも婦人科検診は大事だなと思いました。

(聞き手=松永詠美子)

▽おかだ・かおる 1978年、大阪府生まれ。10代から芸能活動を始め、2000年から「世界ふしぎ発見!」(TBS系)のミステリーハンターとして活躍。その後、CMやドラマなどに数多く出演し、2010年には念願だったネイルサロン「Lagoon」(恵比寿)を開店。オーナーとして手腕を発揮する一方、2015年に結婚して現在は2児の母となっている。

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