性感染症最前線

「亀頭包皮炎」は糖尿病の隠れた合併症 包茎なら要注意

写真はイメージ
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 体のどこにでもいる常在菌のカンジダ菌(真菌の一種)。他の常在菌とのバランスが崩れ、性器に増殖すると「性器カンジダ症」という病気を引き起こす。頻度は少ないが、セックスが感染の原因になることもあり、男性は亀頭部や包皮が赤くなり、かゆみや違和感が出る「カンジダ性亀頭包皮炎」という病態になる。

 その性器カンジダ症の引き金になるひとつが糖尿病。男性では「糖尿病性亀頭包皮炎」を起こしていると合併しやすくなる。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)を受診した30代男性Aさんに表れた糖尿病性亀頭包皮炎の症例はこうだ。

「私は仮性包茎なのですが、ペニスの皮がおかしいんです。ここ2週間ほどペニスの先端の包皮に柔軟性がなくなり、勃起が起こると皮が伸びずに細かな裂けた傷がいくつもできて、なかなか治らないのです」

 小便をすると傷が多少しみるが、大したことはない。それより勃起をすると傷が広がり、軽い出血を伴い痛い。もちろんセックスはできなくなったという。尾上泰彦院長は「これは糖尿病患者さんのパンツの中の秘密」と、こう言う。

「神経障害、網膜症、腎症は糖尿病の三大合併症として有名ですが、亀頭包皮炎も合併症のひとつなのです。しかし、糖尿病専門医の先生はパンツの中を見ませんから、ほとんど知られていません。若くて小太りの糖尿病の男性で亀頭包皮炎を起こす人が結構います」

 糖尿病性亀頭包皮炎の特徴は、亀頭周囲の包皮の輪状部分に縦に亀裂がいくつも生じる。原因は糖尿病による末梢への血行障害。包皮の弾力性が失われ硬くなるので、伸ばしたり勃起したときに亀裂が入るのだ。特に包茎や仮性包茎だと起こりやすい。Aさんも糖尿病と診断されていたが、若いので油断してきちんと治療を受けていなかったという。包皮をめくろうとすると傷が広がり痛みもあり、ペニスをうまく洗えない。そのためカンジダ菌が増殖しやすく、カンジダ性亀頭包皮炎を合併しやすい。また、傷があるので梅毒や尖圭(せんけい)コンジローマなど他の性感染症も合併しやすくなるという。

「糖尿病性亀頭包皮炎の患者さんには、きちんと糖尿病の治療を受けることと、ウオーキングを指導しています。そして秘策は『3Dストレッチ』です。包皮が硬いまま放置するとめくれなくなるので、お風呂に入ったときに包皮を上下にめくる、包皮をつかんで縦と横に伸ばす運動をする。毎日、無理のない程度で少しでもいいので続けます。血糖値が良くなれば包皮の弾力性が回復し、傷も自然と良くなります」

 糖尿病になったら予防のためにも“チン皮ストレッチ”をやっておこう。

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