役に立つオモシロ医学論文

脳に刺激を与える活動をしている人は認知症になりにくい?

刺激を与える活動の種類が増えるほど、発症リスクも低下!?
刺激を与える活動の種類が増えるほど、発症リスクも低下!?

 認知症予防には頭を使う知的な作業がいいという話を聞くことがありますが、本当でしょうか? 脳を刺激する活動と認知機能の低下リスクを検討した研究論文が、米国神経学会誌の電子版に2019年8月6日付で掲載されました。

 この研究では、認知機能に障害がない70歳以上の米国人2000人が対象となりました。被験者は、脳に刺激を与える活動として、「読書」「コンピューターの使用」「社会活動」「ゲーム」「クラフト活動」の5種類についてその関与状況が調査され、軽度認知機能障害(認知症の前段階)の発症リスクが検討されています。なお、研究結果に影響を与えうる、年齢、性別、教育水準などについて、統計的に補正を行い解析しています。

 中央値で5年にわたる追跡調査の結果、脳に刺激を与える活動への関与は軽度認知機能障害の発症リスクを低下させることが分かりました。例えば、中年期(50~65歳)にパソコンを使用していた人では48%、晩年期(研究参加の前年)にパソコンを使用していた人では30%、統計学的にも有意に軽度認知機能障害の発症リスクが低下しました。

 また、脳に刺激を与える活動の種類が増えるほど、軽度認知機能障害の発症リスクが低下することも示されています。

 脳に刺激を与える活動をしていなかった場合と比較して、2種類の活動で28%、3種類の活動で45%、4種類の活動で56%、5種類の活動で43%、統計学的にも有意にリスクが低下しました。

 知的な活動に関与できる人はそもそも健康状態が良好なのかもしれません。とはいえ、クラフト活動や読書など、楽しみながら関与することは、認知機能の低下を予防するだけでなく、充実した日々を過ごすことにつながるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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