若い頃、映画「イージー・ライダー」のオープニング曲を口ずさんだ人も多いでしょう。その製作、脚本を手掛けた俳優ピーター・フォンダさんが、肺がんによる呼吸不全のため亡くなったと報じられました。享年79。残念でなりませんが、一つ救いだったのは自宅で息を引き取ったということです。
内閣府や厚労省の調査によると、自宅での最期を望む人は5~6割。ところが自宅でみとられる割合は2~3割にとどまります。
スウェーデンやオランダは、ケア付き住宅を含めると6割前後ですから、日本は病院での死亡率が高い。
フォンダさんが亡くなるまでの経緯はわかりませんが、望ましい最期を迎えるための準備を整えておくことは大切です。今回は、がん患者が自宅でのみとりを希望するケースを考えます。
ポイントは、在宅で診療を受けられるようにする準備です。
たとえば認知症の進行とともに少しずつ介護の必要性が高まってくると、訪問診療を行う医師やケアマネジャーが訪問看護、訪問介護、訪問薬局などを手配します。在宅診療はチームプレーです。
ところが、がん患者の場合は、末期になるまでは元気に働いているケースも多く、その準備ができていないことが少なくないのです。そこで、患者として重要なのは、信頼できる訪問診療医を見つけておくこと。持病でかかりつけ医がいるなら、その医師に信頼できる訪問診療医を教えてもらうといい。末期は緩和ケアが不可欠で、緩和ケアに精通している訪問診療医がベターです。
そんな医師の探し方はどうするか。チェックポイントを挙げると――。
●一貫して診療してくれる医師や看護師がいる
日替わりの医師しかない、休日や夜間はコールセンターの対応になる、といった場合は、満足できる緩和ケアは期待できません。私の元部下で埼玉で「志木ファミリークリニック」を開業した関谷徳泰医師は、クリニックのHPに電話番号とともに24時間365日訪問可能と明記しています。
●HPに医師のプロフィルが掲載されている
未掲載の医療機関は、それなりの理由があったり、そもそも固定した医師がいなかったりします。
●訪問を依頼した時の対応の時間を尋ねる
末期では一日がとても貴重です。すぐに往診してもらえるのと、往診まで時間を要するのでは大きな違いでしょう。
●連携病院を尋ねる
在宅でみとられるのが希望でも、最期まで一貫して在宅というのは難しい。必要に応じて入院治療を組み合わせるのが現実的です。たとえば、がんが肝臓に転移すると、腹水を起こしやすいのですが、入院で治療を受けると改善し、回復すれば自宅に戻ることができます。
それでも難しいという方は、繰り返しになりますが、医師に相談すること。ネットや雑誌の情報をうのみするのは、よくありません。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁