生活と健康 数字は語る

「危険率」偶然の結果が出てしまう確率が5%未満なら真実

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回、平成19年から29年にかけての39%から29%への喫煙率の減少は、「有意水準0.05で統計学的に有意である」という客観的な背景をもって示せることを説明しました。今回は、そのことをもう少し別の視点から解説してみます。

 たとえば、39%から29%への減少が、標本の抽出のときに、たまたま平成19年では多めに、平成29年では少なめになされた結果かもしれないと考えてみましょう。一部の対象で調査する標本調査では必ずそういう危険があります。もともとの集団が男女半々だったとしても、10人選んでみたら70%が男性だったということがあるわけです。

 この、たまたま減ったという結果が出てしまう確率を「危険率」と呼ぶのです。見かけの数字は減少していますが、それは偶然の減少にすぎない場合があることを考慮し、偶然の減少の可能性を計算し、それが小さいとき、実際には5%未満のとき、偶然ではなく、真に減少していると判断するのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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