サラダではスッキリしない 「便秘の勘違い」を医師が解説

大豆や大豆加工食品は食物繊維を多く含む
大豆や大豆加工食品は食物繊維を多く含む

「ちょっと考え方を変えれば、かなりの人が排便できるようになります」

 こう言うのは、寺田病院の神山剛一医師。排便機能専門医である神山医師のもとには、便秘に悩む患者が全国から訪れる。悩み解決のために知っておくべきことを聞いた。

「国内で一昨年に便秘のガイドラインができましたが、ガイドラインが示しているのは“こうなったら便秘と考えましょう”という線引き。実は、便秘を明確に定義しようとしても、客観的な数字で具体的に出すことはできない。排便の仕組みは、医学的に解明されていないことが多いのです」(神山医師=以下同)

 たとえば、「大腸の中に便が★グラムたまっていると便秘」「肛門に便が下りてきて、★グラム出せたら便秘ではない」などと示すことはできない。

 しかし、便秘を間違ったイメージで捉え、不安がっている人は多い。「3~4日に1回しか排便できないから便秘だ」「お腹が張っている。便がたまり過ぎているのではないだろうか」「吹き出物や疲労感がひどい。便秘のせいだ」「スッキリと便が出なくて心配」など……。

「いずれも、便秘に悩む方がよく口にする勘違いです。何日も便が出ていなくても、その方が困っていなければ便秘ではありません。お腹の張りや吹き出物、疲労感は便秘と関係ないところに原因があるかもしれない。“スッキリ”ということにこだわり過ぎている方もいます」

 神山医師が豊富な臨床経験の中で、便秘を訴える方に特によく見られると指摘するのが、「便がたまる食生活をしていない」。ある患者は1週間ずっと便が出ていないと訴えた。下剤を飲み始めると、お腹がゴロゴロしたりギュルギュルしたため、このままで大丈夫だろうかと心配し、神山医師の外来を受診した。

「レントゲンを撮ると、1週間便が出ていないのですが、腸には便がたまっておらず空っぽ。便が出ない原因は、便がたまらない食生活をしていたことでした。食事をしっかり見直し、便がたまる食生活を心掛けてもらったら、問題なく排便できるようになりました」

■うな重を食べるならミートソースのスパゲティ

 便がたまる食生活とは、食物繊維を十分に取れる食生活だ。うな重やカツ丼などは栄養価は高いが、食物繊維はほとんど取れない。これならまだ、五目ラーメン、冷やし中華、カレーライス、ミートソーススパゲティなどの方が食物繊維の摂取量は上だ。

「食物繊維を意識して食べている人は非常に少ない。また、食物繊維というと野菜を思い浮かべるからか、『サラダを食べています』とよく言われますが、生野菜の場合、食物繊維としての摂取量は大したことはありません。キノコ類、ゴボウなどの根菜類、大豆・大豆加工食品などが食物繊維を多く含む食材で、ひとつのものを取り続けるのではなく、バランス良く選ぶのがポイントです」

「便がたまる食生活」に加え、神山医師が勧めるのは、「便の様子を毎回チェックする」。バナナ状の便が理想的だが、そうでなくても、便の様子を見れば、何が問題かを推測できる。

「問題視されがちな刺激性下剤も、限定的な使い方であれば、飲んでも構わないと思っています。ただ、便の様子は確認してほしい。下剤で水状の便しか出なければ、食物繊維の摂取量が少なく便の材料がないと判断できます。一方、排便の初めにコロコロした硬い便が出ると便秘と判断しがちですが、最終的な便が軟便となっている場合は、やはり食物繊維不足が原因のことが多いので注意が必要です。便を見て、問題点を把握し、そこから変えていくのです」

 ただし、食生活を変えても排便困難が続くようなら、何らかの病気が隠れている可能性もある。専門医の受診が必要だ。

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