市販薬との正しい付き合い方

西洋薬には見当たらない「体を温める」作用は漢方が得意

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 保険診療上の適応症、原料、併用に対する考え方……漢方と西洋薬にはいくつも違いがあります。「冷え」もそのひとつといえます。

 西洋薬の飲み薬で体を温めるものはありませんが、漢方には存在します。ですから、「冷え」や冷えがもたらす症状に対しては、西洋薬ではなかなか対処が難しく、逆に漢方は得意分野といえるのです。

 体を温める薬は「温裏薬」と呼ばれ、生薬としては、乾姜、附子、桂皮、細辛、呉茱萸などがあげられます。

「冷え性」とは体が冷えやすい体質のことを指しますが、それによって生理不順や頭痛など、さまざまな症状を引き起こします。逆に温めることによって、食欲不振や胃腸障害が改善されたり、妊娠に有利に働いたりもします。冷えは女性の多くが経験することから、漢方による冷え対策は女性により有効といえるかもしれません。

 冷えのタイプには、「作り出す熱が少ないタイプ」と「熱の循環が悪いタイプ」の2つがあります。前者は、漢方では「気虚」や「血虚」と呼ばれるもので、エネルギーが足りないタイプです。このタイプは、食べ物や休息によるエネルギー補充に加え、漢方としては「補中益気湯」などが有効です。後者は「瘀血」という血のめぐりが悪い状態によって起こるもので、桂枝茯苓丸などが有効といえます。これらに加え、女性であれば、当帰芍薬散なども良いとされています。

 冷えの改善には、体を温める作用がある食べ物を取る、お風呂に入る、衣服を調整するなど、生活面での対策が大切なのは言うまでもありませんが、漢方で内面から温め、体質改善を行うのも有効です。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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