病み患いのモトを断つ

給食の白身フライで痺れが…魚のヒスタミン中毒を防ぐ知恵

白身フライは弁当の人気おかずだが…
白身フライは弁当の人気おかずだが…(C)日刊ゲンダイ

 自宅で魚をさばく人は要注意だ。沖縄県浦添市内の小中学校10校の給食に提供されたシイラのフライを食べた生徒ら50人が、唇や舌の痺れを訴えていたことが分かった。県の保健所によれば、痺れの原因は、ヒスタミン中毒とみられるという。東京海洋大海洋生命科学部非常勤講師の西潟正人氏(魚食文化論)に、魚介類の食中毒と対策について聞いた。

「アミノ酸の一種ヒスチジンは、温度管理が悪いと、細菌の作用によってヒスタミンに変わります。それで、高濃度に増殖したヒスタミンを含む魚を食べると、ヒスタミン中毒になる。軽症なら、口の周りの痺れで済みますが、重症化するとまれに呼吸困難を起こすこともあります。ヒスチジンは、カツオやマグロなどの赤身の魚のほか、ブリやサバ、アジ、イワシなど青魚にもよく含まれるので要注意です」

 西潟氏が挙げたのは、食卓でおなじみの魚ばかり。ヒスチジンが一度、ヒスタミンに変換されてしまうと、加熱してもヒスタミン中毒は防げないから厄介だろう。生でも加熱でも魚を食べて口がピリピリしたら、ヒスタミン汚染の恐れがあるという。

「ヒスチジンそのものは甘味を生み出すアミノ酸で、その状態で加熱すれば問題ありません。ヒスタミンは、アレルギー物質ですから、加熱の影響を受けないのです。魚屋やスーパーなどで魚を買ってくると、ビニール袋をテーブルなどに置きっぱなしにして、一息ついたりしているうちに、長い時間、そのままにしたりする人がいます。あれがよくない。魚を買って帰ったら、すぐに冷蔵庫に入れて、なるべく翌日までに食べる。それが無理なら冷凍保存で、解凍するときは冷蔵庫で解凍します。常温解凍だと、解けるにつれてヒスタミンが蓄積されます」(西潟氏)

■まな板の使い回しで腸炎ビブリオに感染

 食中毒というと、夏に多いイメージだが、昨年の発生件数を月別に見ると9月は4月、5月に次いで3番目。暑さが本格化する前と後の方が頻発する傾向が見て取れるだろう(厚労省「食中毒統計」)。

 食中毒を起こしやすい時季にあって、こと家庭での発生を考えると、腸炎ビブリオも侮れないという。

「腸炎ビブリオは、感染性胃腸炎を起こす細菌のひとつです。塩分を好むため、魚を三枚におろして塩を振ったりすると、増殖が活発化する環境が整う可能性があります。そのまな板をしっかり洗えばいいのですが、そのまま別の食材を切ったりすると、まな板についた腸炎ビブリオがその食材に付着して、感染することがあるのです」

 かつては魚をさばいたまな板でキュウリの塩もみをしたところ、キュウリに腸炎ビブリオが付着。魚は焼いて食べたが、キュウリが生だったため、腸炎ビブリオ食中毒事件として報じられたこともある。

「腸炎ビブリオは、3%の塩分濃度で最もよく増殖し、そのスピードが速い。しかし、10度以下ではほとんど発育せず、熱に弱い。鮮魚と野菜などを扱うまな板は分けて、調理は手早く。まな板の使い回しはご法度です」

 寒くなると増えるノロウイルスは、二枚貝に多いといわれるが、実は7割は原因食品が特定できていない。中心部にしっかり火が通るように90度以上で90秒以上加熱するのが無難だ。

 では、アニサキスはどうか。

「アニサキスは、サバやサケ、スルメイカ、サンマ、イワシなどに寄生しています。たとえば、シメサバを作るとき、おろした身に点のような染め痕があったら、アニサキスがいる証拠。骨抜きなどで除去するといい。心配なら、いずれの魚介類も2日間冷凍すれば、死滅します」

 食欲の秋、安心して晩酌を楽しむなら、これくらいのことは頭に入れておこう。

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