生活と健康 数字は語る

統計学の「有意水準5%」はどのように決められているのか

科学的なバッググラウンドはない(C)日刊ゲンダイ

 統計学的検定という客観的な方法について説明してきましたが、実は少し怪しいところもあります。一般に統計学的に有意な差かどうかを決める基準として、「有意水準5%未満」が用いられますが、この5%の基準はどのように決められているのでしょうか。5%、20回に1回未満の偶然の間違いは認めようというのですから、かなりアバウトな感じがします。厳しい基準なのか、緩い基準なのか、感じるところは人それぞれで、主観的な感じがあります。

 しかし、この主観的な感じというのは正しい感覚で、意外なことにこの5%という数字は伝統的に用いられてきたにすぎず、科学的なバックグラウンドがありません。主観的な基準と言っていいものです。最近では実際に5%という有意水準は緩すぎるので、1%にまで厳しくした方がいいという意見もあります。10年後には、統計学的な有意差は有意水準1%で判断されるようになっているかもしれません。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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