後悔しない認知症

実の息子よりも嫁の来訪を喜ぶ親も 多く接することが大事

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「機嫌よく生きてもらう」

 何度も述べているが、これこそが、子どもが認知症の親に接するとき何よりも心しなければならないことだ。いかに認知症が進行しても「機嫌よさの種」は全部なくなってしまうわけではない。家族、趣味、好きな食べ物、贔屓にしている芸能人、好きな場所など、いろいろとあるはずだ。そうした「機嫌よさの種」に接する機会が多ければ、セロトニン、ドーパミン、オキシトシン、エンドルフィンなどの「幸せ物質」と呼ばれる脳内物質の分泌も促すことになる。結果、脳の老化を遅らせることにつながるわけだ。

 以前、老人専門総合病院に勤務していたころのことだ。

 大きく分けて、いつも穏やかで見舞客の絶えない患者さんと、もともと怒りっぽく、威張るために見舞客がほとんどいない患者さんがいた。経験的に前者に比べて後者のほうが認知症の進行が明らかに速かった。現役時代の仕事を調べてみると、すべてがそうだったとは言えないものの、後者の多くは大企業の役員、政治家、弁護士といった経歴を持つ高齢者だった。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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