性感染症最前線

陰部の潰瘍が口にも同時に…「ベーチェット病」を疑うべき

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 陰部に潰瘍ができたら、普通なら性感染症を疑うだろう。しかし、他の病気が原因の可能性もあるので、「恥ずかしい」なんて言ってはいられない。早めに性感染症科や泌尿器科(婦人科)で、きちんと調べてもらうことが大切だ。

 陰部に潰瘍ができる代表的な性感染症といえば、患者が急増中の「梅毒」。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「梅毒では、最初にしこり(初期硬結)ができますが、その時点ではなかなか気づきにくいと思います。放置していると、そのしこりの部分に硬性下疳(げかん)という潰瘍ができる。しかし、硬性下疳は痛みなどの自覚症状がないのが特徴です。そのため、感染を拡大させてしまうのです」

「軟性下疳」という性感染症も、激痛を伴う潰瘍ができるが、輸入感染症で国内には原因菌はいないとされる。小さな水膨れがいくつもできて、軽い痛みやかゆみを伴う「性器ヘルペス」は、水膨れが破れればびらん(表皮の損傷)になるが、潰瘍のように皮膚や粘膜が深くえぐれることはない。一方、性感染症以外で陰部に潰瘍ができる病気がある。原因不明で難病指定されている「ベーチェット病」という慢性再発性の全身性炎症性疾患だ。主症状は、①口腔内粘膜のアフタ性潰瘍(口内炎)②外陰部潰瘍③皮膚症状(結節性紅斑など)④眼症状(ぶどう膜炎など)。ただし、4つの主症状がすべて出る完全型は30%弱とされる。

「ベーチェット病で外陰部潰瘍ができるのは、男性では4割前後、女性では6割前後。男性では陰のう、陰茎、亀頭に、女性では大小陰唇、腟粘膜に痛みを伴う潰瘍ができます。べーチェット病は、多く(9割近く)の場合で口腔内粘膜のアフタ性潰瘍ができるので、口の中と陰部の両方に潰瘍ができたらべーチェット病を疑う必要があります」

 陰部の潰瘍は、口内炎ほど再発が多くないが、瘢痕(はんこん)が残ることがある。また男性では副症状として1~2割程度に「副睾丸炎」がみられるという。

 国内の発生頻度は人口10万人当たり0.2人と非常にまれだが、「陰茎がん」も性感染症と似たような病変ができる。初期では痛みなどの自覚症状がないので要注意だ。

「陰茎がんの病変は、カリフラワー状の腫瘤(しゅりゅう)や浅いびらん、周囲が隆起した深い潰瘍が生じることが多い。これらの病変は尖圭(せんけい)コンジローマ(イボ)、性器ヘルペス、梅毒などの性感染症と同じです。とにかく早く受診して鑑別することが重要です」

 放置は危険。肝に銘じておこう。

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