ようこそ!不老不死レストランへ

豊富な栄養素を余さず生かすフランスの家庭料理の知恵

牛乳、ローズマリー、ニンニクを加えて煮立てたら、弱火にして約20分煮込む(C)日刊ゲンダイ
食べられることを目的とした唯一の生体物質を心していただくべき理由

 肉にせよ、卵にせよ、野菜にせよ、魚にせよ、食材とはいずれも他の生物の生命の一部もしくは全部を収奪してしまう行為であり、食べることは生きることであると同時に、他の生物を殺生することでもある。私たちはこの事実に対していつも謙虚であるべきで、地球環境に対して常に敬意を払わなければならない。

 この食の掟の中にあって、ただひとつだけの例外ともいえるものが「乳」である。乳は唯一、食べられることを目的としてつくられた生体物質であり、また再生産が可能な物質でもある。ヒトを含め哺乳動物の赤ちゃんは乳だけを栄養源として発育するから、乳には生存のために必要なエネルギーと栄養素が十全に含まれている。

 この意味で乳は完全食といえる。昔、私が受けた生物学の試験で、乳の主要な成分を記せ、というものがあった。乳には、タンパク質、炭水化物(乳糖)、脂質の3大栄養素がおよそ3%ずつバランスよく含まれている。しかもミセルという微粒子として分散しているので(だから白濁している)スムーズで飲みやすい。消化も良い。初期の乳には赤ちゃんに必要な免疫物質も含まれている。

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