Aさんは自分の思いと担当医の受け取り方は違うのだと感じたそうです。それでも、そのままそれ以上のことは話さずに治療を受けてきたといいます。
「私はB病院で仕事をしていたことで、人工呼吸器につながれた患者さんをたくさん見てきました。それぞれの人生を歩まれ、意識はなくなっても手も体も温かい。見舞いに来られたご家族は『よろしくお願いします』と言って帰られます。患者さんが熱を出し、痰がたくさん出る時などは、医師や看護師は痰を吸引しやすいように一生懸命、背中を叩いたりして手当てをしていました。その患者さんたちを見て『無駄な延命』なんて思ったことはありません」
その一方、Aさんは自分が入院するたびに「無駄な延命はしたくありません」と言い続け、この治療が無駄だったのか、無駄でなかったのかを考えながら、10年間も生きてきたのです。
がんと向き合い生きていく