脂質異常症が突然死を招く… 怖いのは「食後」の中性脂肪

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病や高血圧などと比べて、脂質異常症はどういう病気かピンときにくいのではないか? しかし脂質異常症を放置すると、その先には突然死がある。東京慈恵会医科大学教授で、「健康をマネジメントする」を最近出版した横山啓太郎医師に脂質異常症について聞いた。

「糖尿病ですら、健診で指摘を受けて受診する人が半分ちょっとです。自覚症状がなく、病気の認知度が低い脂質異常症なら、危機感を持って受診する人はもっと少ないかもしれません」

 しかし脂質異常症は、糖尿病、高血圧と同様に動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気のリスクを上げる。甘く見てはいけない。

 脂質異常症は、「LDLコレステロール140以上」「HDLコレステロール40未満」「中性脂肪150以上」のいずれかに該当した場合に診断される。治療は食生活の改善と薬の服用だ。

「LDLコレステロールは食事の影響を受けにくく、体質が関係しているため、食事制限をしなくてもいいとの声もあります。しかし、その影響に個人差があり、そういう意味では、コレステロールや脂質の多い肉の脂身、卵、乳製品などは控えめにすべきです。一方、中性脂肪は食事の影響を大きく受けます。特にアルコールやカロリーの高い揚げ物などを控える必要があります」

 近年、注目を集めているのが中性脂肪だ。検査で測定するのは「食前」の中性脂肪だが、前述の通り中性脂肪は食事の影響を大きく受ける。

 つまり、検査数値が低くても、食事によって中性脂肪が食後に高くなる状態が続けば、動脈硬化を進行させるのではないかと考えられるようになってきているのだ。

「ヨーロッパでは、中性脂肪が食後高いことを無視できない、という流れも出てきています。空腹時の中性脂肪が正常であっても食後の中性脂肪が高いのは、中性脂肪が処理できなくなったと考えられる。普段は酒を飲み、肉、卵、乳製品など中性脂肪が高くなる食生活をしているのに、健診の前だけ控えめにした人は、実際の数値はもっと高い可能性があります」

■LDLが高く中性脂肪も高い人はより注意が必要

 同じLDLコレステロールが高い状態でも、中性脂肪の数値によって、心筋梗塞などのリスクが変わることも明らかだ。LDLコレステロールが高く(140以上180未満)、さらに中性脂肪も高い場合、LDLコレステロールの直径が小さい「スモールデンスLDL」となって血管壁に入り込みやすくなり、心筋梗塞などのリスクを一層高めるのだ。

「脂質異常症だが、薬の副作用が心配で服用したくない」と思う人もいるだろう。しかし、「食生活の改善で数値が下がらない」「LDLコレステロールも中性脂肪も高く、スモールデンスLDLが考えられる」という場合、薬は必須だ。

「痩せ形で食事も気を付けているのにLDLコレステロールが高いという人は、家族性高コレステロール血症も疑われます。脂質異常症の中でも、心筋梗塞などのリスクが一段と高い」

 脂質異常症の薬であるスタチン系やフィブラート系は、確かに横紋筋融解症や肝障害などの副作用が起こることがある。横紋筋融解症は筋肉が融解・壊死するものだ。しかしいずれも血液検査でチェックできる。

「スタチン系やフィブラート系に限らず、すべての薬に副作用があります。薬のメリットとデメリットをはかりに掛けて、医師は薬を出している。副作用のチェックもしながら処方しているので、自己判断で薬をやめるのはむしろ危険です」

 心筋梗塞をみすみす招くことになる。

関連記事