性感染症最前線

性感染症にかかりやすい男性は「尿道下裂」の疑いがある

写真はイメージ
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 性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)を受診した3人の症例はこうだ。

ケース1 20代前半の男性。「先生、尿道の入り口にイボができちゃいました」。痛くもかゆくもないという。確かに尿道口から直径5ミリ大のイボが顔を出している。診断は「尖圭(せんけい)コンジローマ」だった。

ケース2 30代前半の男性。「先生、尿道の中が白くただれています」。診察すると、尿道口から約3ミリ奥に、直径4ミリ大の白い潰瘍ができている。痛みはないという。

 医師が「3週間ほど前にエッチしましたか」と聞くと、「え、何で分かるんですか」と男性。診断は「梅毒」の初期症状である硬性下疳(げかん)。オーラルセックスによって引き起こされることの多い症状だ。

ケース3 20代後半の男性。「先生、オシッコのし始めがものすごく痛くて、膿(うみ)のようなものが出てます」。診察すると、尿道口からあふれんばかりの黄色い膿が出ている。典型的な「淋菌性尿道炎」の症状だ。

 どの症例も頻度の高いなじみの性感染症だが、この3人の患者にはある共通点があった。それは「尿道下裂」。尾上泰彦院長が言う。

「尿道下裂とは、男性のペニスの生まれつきの形態異常(奇形)です。外性器の奇形は男女共に大変多く、男性の尿道下裂は約200人に1人ともいわれます。胎児のころの外性器の発育分化の過程で、性ホルモンの分泌や作用に何らかの問題があったと考えられていますが、ハッキリとは解明されていません」

 尿道下裂をひと言でいうと、尿道が尿道口から裏筋に沿って裂けている状態。どれくらい裂けているかは人によってさまざま。程度がひどければ生まれたときに分かるが、程度が軽ければ産婦人科医や両親も気がつかない。大きくなって立ち小便やセックスができれば臨床的には問題ないと考えられている。ただし、性感染症の側面から見ると大きな問題点があるという。

「通常、成人男子の尿道口は縦長に割れていて、その長さは約5~10ミリです。一方、泌尿器科などで偶然発見される尿道下裂の人は、程度の差はありますが10~20ミリです。本来、尿道の先端が狭いのは尿や精液を勢いよく出すためです。それと、病気の原因となる病原体が侵入しにくいよう狭くつくられているのです」

 つまり尿道下裂があると感染防御機構が働かず、性感染症にかかるリスクが非常に高くなるという。自分の尿道口をよく観察し、気になるようなら泌尿器科医の診察を受けよう。尿道下裂の程度がひどい場合は、手術をすれば尿道口を狭くすることができる。

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