病み患いのモトを断つ

各界で相次ぐ発症報道 脳梗塞は下戸より酒豪がなりやすい

楽しくてもほどほどに
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 歌手の美輪明宏(84)が脳梗塞で入院。23日まで予定されていたコンサートは中止したものの、幸い症状は軽く、復帰に向けて治療を受けているという。元レスラーでタレントの天龍源一郎(69)は、4月に小脳梗塞で治療を受けていたことをテレビ番組で語った。2人を襲った脳梗塞、意外な遺伝子が関係しているのだ。東京都健康長寿医療センターの桑島巌氏に聞いた。

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「脳の血管が詰まる脳梗塞のリスク因子は高血圧ですが、アルコールの影響も強い。アルコールを分解する遺伝子のタイプが脳梗塞を起こす要因になることが分かっているのです」

 アルコールは、肝臓のアルコール脱水素酵素によって分解される。その酵素の働きが強く、アルコールを有害物質のアセトアルデヒドに変えやすい「アデニン型」と、酵素の働きが弱く、アセトアルデヒドに変えにくい「グアニン型」だ。酒に強い人はグアニン型で、酒に弱いアデニン型がアルコールを飲むと顔が赤くなるのはアセトアルデヒドのせいだという。

 日本医大と国立長寿医療研究センターの研究によると、酒豪傾向のグアニン型の男性は、下戸傾向のアデニン型に比べて2・16倍も脳梗塞の発症率が高かった。脳梗塞の最大のリスク因子の高血圧はそうでない人に比べて発症率が2・4倍。酒豪傾向のグアニン型は、高血圧に匹敵するリスクといっていいだろう。

 そういえば、天龍は、酒豪ぞろいの格闘家の中でも特に酒豪で知られていて、本紙好評連載「今だから語れる涙と笑いの私の酒人生」に登場した元レスラーの面々は、天龍の酒豪ぶりをこんなふうに語っていた。

「ご一緒している時はたいていお店のお酒が売り切れになっちゃいましたね」(2015年2月13日付風間ルミさん)

「アイスペールにウイスキーや日本酒、焼酎、ワインと何でも放り込んで回し飲みする『天龍スペシャル』は天龍源一郎さんの定番」(2018年12月13日付小橋建太さん)

 風間さんも“天龍スペシャル”の経験者で、「こんな飲み方してるから、どんどん酒が強くなっちゃったんですよね」と笑っていた。

■百薬の長である酒量は

 一般人は決してマネしてはいけない酒豪ぶりだが、アルコールをめぐっては、飲酒後に血圧が下がるという報告もある。そうだとすると、どう解釈すればいいのか。

「夕食時にアルコールを摂取してしばらくは、血圧が下がりますが、就寝してから起床時にかけて普段よりも血圧が上がりやすい。その血圧上昇については、アルコール摂取量が一定量を超えて増えれば増えるほど、高くなります。つまり、一定量が問題です。その範囲内なら、血圧をそれほど上げることなく、血管障害のリスクを下げるメリットを享受できます。その一定量は、アルコール量で1日30ミリグラムです」

 ビールは大瓶1本、日本酒は1合、ウイスキーはダブル1杯だ。アイスペールで飲むのはともかく、酒豪は満足できない。そこが落とし穴だという。

「当たり前ですが、飲めない人は許容量が少ない分だけ、アルコールの害が少ないのですが、飲める人は飲めるがゆえに歯止めが利かず飲んでしまうと、食べる量も増えます。そうすると、脂肪分や塩分の摂取量もおのずと多くなる。血圧も上がって、脳梗塞を起こしやすくなります。遺伝子がそうさせるというよりは、飲めるがゆえに脳梗塞のリスクを重ねやすいということです」

 酒が百薬の長であるのは、前述した通りアルコール摂取量で1日30ミリグラムだ。それより飲みたければ、せめて週に2回休肝日を設けて、厄介な脳梗塞を防ぐ生活を心掛けた方がいい。

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