市販薬との正しい付き合い方

耳鳴りや難聴の治療では漢方が「主役」として使用される

写真はイメージ
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 夏のうだるような暑さから一転して、朝夕が涼しい季節になりました。季節の変わり目は何かと体調を崩しやすいものです。たとえば、これまで紹介してきた漢方と関連が強い症状として、疲労感、冷え症、便秘、肌トラブル、アレルギーなどが挙げられますし、更年期障害など婦人科トラブルも悪化しやすい季節ともいえます。

 ほかにも、漢方が治療に用いられる症状のひとつに「耳鳴り・難聴」が挙げられます。耳鳴りや難聴は、加齢とともに起きることもありますし、季節の変わり目やストレスによって発症するケースもあります。

 加齢に伴う難聴は一般的には高音域が聞こえづらくなります。耳鳴り患者の9割以上に聴力低下(難聴)が認められるとも報告されています。中耳炎などの明らかな原因によって、耳鳴りや聴力低下が起きている場合もあるので、違和感があった場合、まずは病院に行って検査することをおすすめします。

 一方で、検査をしても原因がわからないケースもあり、そのような耳鳴りや難聴に対しては薬による治療が主に行われます。血流改善薬ATP(アデホス)、神経調節薬ビタミンB12(メチコバール)、利尿薬イソソルビド(イソバイド)が一般的に用いられますが、漢方も“主役”として使われています。

 水の流れを良くする漢方が用いられることが多く、真武湯や苓桂朮甘湯、ほかの症状でも何度も紹介させていただいた五苓散などが該当します。

「検査をしても明らかな原因がわからない症状」というところが、漢方の得意分野に合致しているのです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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