病気を近づけない体のメンテナンス

【爪】伸びた白い部分をすべて切ってしまうのは大間違い

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 爪は髪やヒゲと同じで、放っておくとどんどん伸びるので定期的に手入れ(カット)が必要になる。しかし、やり方を間違うと、さまざまなトラブルの原因になる。

 爪のケアに詳しい「埼玉県済生会川口総合病院・皮膚科」(川口市)の高山かおる主任部長が言う。

「悪い爪の切り方で、最も多く見られるのは、爪が伸びた白い部分をすべて切ってしまう『深爪』や、爪の両端を深く切り過ぎてしまう『バイアス切り』です。爪の白い部分を残してはいけないと勘違いしている人が多いですが、爪には指先の皮膚を保護する役割があります。切るときは指先の皮膚より短くならないように、白い部分を少し残すのが基本です」

 一般的に爪の正しい切り方とされているのが「スクエアオフ」。まず、爪の先端を真っすぐ横に切る。そして、爪の両端の角が丸くなるように整える切り方だ。

 この正しい切り方をするには、使う爪切りの種類にもポイントがある。爪切りは刃が爪に合わせてカーブしているタイプが多いが、刃が真っすぐなタイプを選んだ方がいい。切る時間帯は、爪が軟らかくなるお風呂上がりが切りやすい。

 爪が伸びるスピードは、血流が多く、新陳代謝が活発な手の爪の方が、足爪よりも2倍くらい速い。個人差や年齢差もあるが、健康な成人の手の爪は1日に大体、0・1ミリずつ伸びるとされている。

 爪を切る頻度の目安は、手は2~3週間に1回、2回に1回は足爪も一緒に切るといい。伸ばすと伸ばすだけ爪が割れるリスクや、爪が切りにくくなる。こまめに切って、深く切り過ぎないことが爪のケアになる。

 では、深爪の習慣はどんなトラブルを引き起こすのか。

「手の深爪をしている人の中には、指先の皮膚がカサカサになってむけたり、ひび割れたりする人がいます。このような場合、深爪が原因なので薬を塗っても治りませんが、爪を長く伸ばしてあげれば治ります。それと、特に足爪の端を深く切ることで起こりやすいのは『陥入爪』です。足は体重と踏み込む力が加わるので深く切った部分の皮膚が盛り上がり、爪が皮膚に食い込んで激しい痛みが生じます」

 また、爪の病気には「巻き爪」もある。爪先の両端が中央に向かって大きく曲がる病気で、爪の下の皮膚を強く圧迫する。ひどくなると炎症を起こしたり、痛みを感じたりする。バイアス切りをすると巻き爪の原因になるが、それだけではない。

■足の小指の爪が小さいのは歩き方が悪い証拠

 もともと爪は湾曲していて、それによって下から加わる力を受け止める仕組みになっている。

 爪は下から力が加わらないと徐々に丸まってしまう性質があるので、足指が浮いて地面に接していない「浮き指」や、足指の関節が曲がる「外反母趾」など、足の別の病気も原因になるという。

 足爪では、小指の爪がほとんどなくなるくらい小さい人もいる。何か病気なのか。

「足の小指は子供のころから曲がっていることが多く、隣の指に踏まれたり、靴の相性が悪くて当たったりして、爪が小さくなってしまう人がいるのです。不都合ではありませんが、5本の指に加わる力がきちんと分散されていないことを示しています。姿勢や歩き方などが悪くなるので、いずれ腰痛や膝痛などに影響する可能性があります」

 昔から爪の根元にある三日月形をした白い部分(爪半月)が「大きい方が健康」といわれるが、それはウソ。爪の根元には「爪母」という場所があり、そこで毎日爪が作られ伸びていく。できたての爪は水分を多く含んでいて白く見え、それが爪半月だ。爪半月の大きさは生まれつきで、甘皮に隠れているので、大きく見える人もいれば小さく見える人もいる。爪半月が健康と関係するのは大きさではなく色の変化。赤みがかったり、青みがかったり、色が悪くなるときは全身疾患を疑う場合があるという。

「爪は皮膚の一部で、皮膚から水分をもらうことで弾力性が保たれています。皮膚が乾燥するとカサカサになるように、爪も乾燥すると割れやすくなります。保湿クリームは手だけでなく、爪にも塗ってあげるとイキイキします。爪が割れやすい人は、ネイルの下地に塗る『ベースコート』などを塗ると爪の保護に役立ちます」

 50代ぐらいから増加する爪の縦ジワは加齢現象なので心配することはない。しかし、爪が白く濁り、厚くなるのは「爪水虫」の疑いあり。黒い筋や血豆のような変色は「メラノーマ」などの皮膚がんの可能性があるので、必ず受診して鑑別してもらおう。

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