病み患いのモトを断つ

秋の初めに悪化しやすい喘息 大人が重症化する意外な要因

発作は明け方に起こりやすい
発作は明け方に起こりやすい

 日中は暑さが残っていても、朝晩は涼しい。そんな季節の変わり目に悪化しやすいのが喘息だ。患者数は小児の方が多いものの、大人の方が重症化しやすい。その裏には、意外な要因があるという。東京医大名誉教授の加藤治文氏に聞いた。

 40歳の男性は、今でも2年前の秋の発作的な息苦しさを忘れられない。

「明け方に咳が出て、目が覚めました。だんだんゼーゼーし始めて、ものすごく息苦しくなったのです。そんな症状は初めてで、『このままではヤバい』と慌てて救急車を呼びました」

 搬送先の総合病院で喘息と診断されて、点滴と酸素吸入で息苦しさは軽快した。それからは呼吸器科に定期的に通院しながら、処方された吸入薬で発作を抑えているが、秋から冬にかけては時々発作的な呼吸困難に襲われ、怖くなるという。

「成人発症で注目されているのが、ペットの影響です。最近、犬や猫などを室内で飼う人が増えた。そうすると、ペットの毛が床に落ちたりして、アレルギーを起こす恐れがあります。喘息は、アレルギー疾患ですから、一度アレルギー反応を起こすと、ちょっとしたキッカケで悪化しやすくなるのです」

 アレルゲンとしては、ダニやハウスダストが知られるが、最近は猫の毛が増えていて、冒頭の男性も喘息を発症する前の年から妻の独断で猫を飼っていたという。

「喘息の人は、気道の過敏性が増していて、慢性的な気道の炎症によって気道が塞がりやすい状態に変化しています。それでゼーゼーしたりするのですが、そこに加えてアレルギー発作が起こると、一気に気道が狭くなり、最悪の場合、命を落とすことさえあるから要注意。発作を起こしてから治療するのではなく、吸入ステロイドなどで発作を起こさないための治療をしっかり続けることが大切です」

 患者数は450万人とされ、小児の6%、成人の3%の頻度で発症するというから侮れないだろう。

■予防は吸入薬と徹底した掃除

 秋に悪化しやすいのはいくつかの要因がある。

「気温が下がり始めると、風邪をひきやすい。それで上気道に感染が起こると、その炎症によって気道の過敏性がさらに増し、アレルギー発作を起こしやすくなるのです。もう一つは、花粉です。この時季は、ブタクサやヨモギなど秋の花粉症シーズン。これらにも反応する人は、アレルゲンが複数あるため、より症状が悪くなりやすい」

 では、厄介な時季を乗り切るには、どうすればいいのか。

「吸入をしっかりするのが大事で、もう一つは生活の見直しです。アレルギー検査をして何がアレルゲンかを調べたら、その原因をできるだけなくすようにこまめに掃除することです。秋は、寝具が夏の汗をたくさん含んでダニが繁殖していますから、十分に干すのがいい。もう一つはエアコンのフィルターです」

 症状が落ち着くと、予防のための吸入薬をサボりがちになるが、勝手に薬をやめると取り返しのつかないことになる。

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