自発的に勉強する子を育てるのに「やってはいけない」こと

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 勉強しなさい、と言っても子どもが言うことを聞かない。むしろ、やる気をなくす。では、見守れば勉強をしっかりやるかというと、あまりにスローペース過ぎて、親としては不安になる――。こんな時、どうすればいいのか?

 9月24日に、不登校の子どもを持つ親御さんを対象にしたイベントが開かれた。開催したのは、オンライン教材「すらら」を販売する「すららネット」。利用者の多くが不登校や発達障害ということで、彼らとの接し方の経験豊富な講師が登壇した。

 講演テーマの一つが、「自発的に勉強する子の育て方」。米カリフォルニア州立大学で教育学、心理学を学び、同州での臨床経験が10年以上ある臨床心理士・道地真喜氏が担当した。保護者からよく寄せられる悩みとして出てきたのが、冒頭の話。「勉強を促すとやる気をなくすのですが、どんな声掛けが子どもの心に響くのでしょうか?」という悩みは、親なら、多かれ少なかれ持っているのではないだろうか?

■行動の「ABC」を変える

 道地氏がまず出した例は、アメリカの心理士ジョン・ワトソンの研究だ。それは、ネズミを見た子どもは最初好きでも嫌いでもない反応を示すが、ネズミを見るたびに鉄パイプとハンマーで騒音を出すという条件刺激を与えるとネズミを怖がるようになり、そのうち白くてフワフワした毛のネズミと同様の、白くてフワフワした毛のウサギや白い髪の毛やあごひげのサンタクロースも怖がるようになったというもの。

「条件刺激は逆効果で、だんだん嫌になります。勉強に対して叱る、注意をするも条件刺激で、最初は書くのが嫌だから宿題が嫌だ、そのうち数学も丁寧に書かなくてはいけないから嫌だ、となっていきます」(道地氏)

 こうならないためには行動の「ABC」を知り、「C」を変えることだ。行動の「A」は「~の時に」(先行条件)、「B」は「~したら」(行動)、「C」は「~だった」(結果)。たとえば、「宿題の時間の時に(=A)」「文句を言いながらもやり遂げたら(=B)」「お母さんが、宿題をやり遂げたことを褒めてくれた(=C)」。

「『褒めてくれた』ということがBの行動の強化子になります」(道地氏)

 “強化子”とは心理学で使われる言葉で、要は、「よーし、やろう」と思わせるもの。もし、この行動の「C」の部分が「文句ばっかり言って答えが間違ってばかりじゃない」「宿題をやるのは当たり前でしょ」などと叱る内容であれば、「よーし、やろう」とは思わなくなる。

「心から褒め、それが本音であることが重要です。ネガティブなことはスルーして、明確に、肯定的に褒める。『静かに見守る』は、子どもに『何も言われないからやらなくていいか』と思わせかねません」(道地氏)

■ネガティブなことはスルー

 ほかにも、親が外出中に雨が降り、子どもが洗濯物を取り入れたが、まだ濡れているうえに床にじか置きにしている場合なら、「お母さんが帰る前に取り入れてくれてありがとう」「お母さん、助かるわ」と褒める。「濡れている」「床にじか置き」はスルーする。

 算数の宿題を子どもが終えたが、たった2問しかない。そんな場合は、「さすがだね、早くできたね」。漢字の書き写しの宿題で、出だしはきれいな文字だが、中盤から急いでやったために文字が汚い場合も、「ここの漢字、すごくきれいに書けているね」。

「以前、私の講座に出席されたお母さんは、口を開けば文句ばかり。しかし、褒めるようになってから、子どもが“お母さんと一緒にいると楽しい”と思うようになって勉強をするようになり、社会科のテストが1桁から70点にまで上がったそうです」(道地氏)

 ネガティブなことはスルーして、明確に、肯定的に褒める……。これは、子どもだけではなく、さまざまな場面で使えそうだ。